コラム

日米サプライチェーン連携で、日本の低迷は救えるのか?

2021年04月14日(水)14時00分

菅首相は16日にバイデン米大統領と直接会談する Eugene Hoshiko/Pool/REUTERS

<日米首脳会談では、中国に対抗して日米が連携してサプライチェーンを見直すことも協議されるが>

日本が貧しくなったという議論が増えてきました。賃金が韓国を下回ったとか、子どもの貧困、コロナ禍を受けての女性の貧困など、胸が痛くなるような話が、どんどん既成事実化しています。先進国という意識はまだ消えない中でも、一部の産業や地域は確実に中進国や途上国に滑り落ちつつあります。この場合の「途上国」とは発展ではなく衰退の途上ということです。

この貧困という問題では、派遣労働の解禁など労働規制の緩和が原因だという声があります。しかし、賃金が切り下げられたのは結果であって、原因ではありません。真の原因は、日本全体が貧しくなったということです。GDPが伸びなくなり、1人当たりのGDPの順位が先進国中でどんどん低下しているからです。

このGDP低迷については、不況が続いているからとか、バブル崩壊の痛手から「再生」できていないからといった認識がありますが、それも誤りです。そうではなくて、70年代半ばには優秀だった国際競争力を日本経済が喪失したからです。1990年前後の資産バブルの崩壊はその結果であり、衰退の一過程に過ぎません。

具体的には、3つ理由を指摘できます。1つは金融、ソフトウェアなどの「目に見えない」知的労働に社会的評価を与えず遅れを取ったこと、2つ目は宇宙航空やバイオなどの先端産業で競争力を失ったことです。こうした「敗北」の原因としては、中進国型教育をダラダラ続けたことや、リスクを許容するマネーの不足などが挙げられます。最先端で競争し続けている企業の場合も、研究開発やデザインなど高付加価値の分野は海外に流出させるケースが多くなっています。

B2Bビジネスへの後退

もう一つ、3番目の理由としては、世界の消費者のニーズを理解する努力を放棄して、部品産業などB2Bビジネスに後退したということです。変われないし、変わるための人材と資金がない中で、個々の企業が生き残る道として選んだ必然はあるものの、結局は、GAFAなど巨大テック企業や巨大な宇宙航空産業の下請けに甘んじていては、全体として先進国型経済とは言えません。

そんな中で、菅総理は、今回訪米してバイデン大統領と対面での日米首脳会談に臨みます。会談の中では東アジア情勢についての意見交換や、排出ガスゼロ化を目指した環境政策、コロナ対策などが話し合われるようです。これに加えて、日米間では中国に依存しないサプライチェーンや先端技術の役割分担についても話題になると報じられています。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ホルムズ海峡の商船保護決議案、安保理で来週採決=外

ワールド

中国、中東紛争沈静化でロシアと努力する意向表明 外

ワールド

ロシア産ガス輸送管近くで爆発物、ハンガリー「偽旗作

ビジネス

EU5カ国財務相、エネルギー企業に対する臨時課税の
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
2026年4月 7日号(3/31発売)

国際基準の情報開示や多様な認証制度──本当の「持続可能性」が問われる時代へ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙の2大テーマでAI懸念を払拭できるか
  • 2
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐせ・ワースト1
  • 3
    「高市しぐさ」の問題は「媚び」だけか?...異形の「攻撃的知能」を解剖する
  • 4
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始め…
  • 5
    トランプ、イランに合意期限「米東部時間6日午前10時…
  • 6
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 7
    地面にくねくねと伸びる「奇妙な筋」の正体は? 飛行…
  • 8
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 9
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 10
    血圧やコレステロール値より重要?死亡リスクを予測…
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始めた限界
  • 3
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引、インサイダー疑惑が市場に波紋
  • 4
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐ…
  • 5
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 6
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙…
  • 7
    中国がイラン戦争最大の被害者? 習近平の誤った経…
  • 8
    年金は何歳からもらうのが得? 男女で違う「最適な受…
  • 9
    初の女性カンタベリー大主教が就任...ウィリアム皇太…
  • 10
    「高市しぐさ」の問題は「媚び」だけか?...異形の「…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story