コラム

バイデン政権は、民主党中道派と左派のいわば「連立政権」

2020年12月17日(木)14時30分

新世代ブティジェッジの運輸長官指名も左派を意識したもの Kevin Lamarque-REUTERS

<両派は「トランプ主義」という共通の敵がいるから連携できているので、今後は何が起こるか分からない>

今週月曜の14日、憲法に規定された選挙人投票が実施され、各州が認定した選挙結果の通りの投票によって過半数を獲得したジョー・バイデン氏の次期大統領としての法的な地位が事実上、確定しました。バイデンの政権移行チームは、既に閣僚級などの高官人事を進めています。その多くが、オバマ政権時代の人脈であることから、そしてバイデン自身がほかでもないオバマ政権の副大統領であったことから、バイデン政権はオバマ政権のコピーだとか、第3期オバマ政権などと言われています。

ですが、外見はそうであっても中身は全く違うと考えた方が良さそうです。

なぜかというと、今回のバイデン政権は、「バイデンに代表される民主党の中道派」と「サンダース、オカシオコルテス(AOC)に代表される民主党左派」のいわば「連立政権」ということが最初から明確だからです。

オバマの場合は、漠然とした左派イメージと経済や軍事外交面での現実主義が折衷されていたなかで、最初は全く根拠のない「オバマならスゴイことをやってくれるだろう」という期待感がありました。ですが、リーマン・ショックからの経済再生を慎重に進めるなかで、民間における省力化とサプライチェーン構築が進み、気付いた時には若者の雇用が大きく傷付き、格差が拡大していたのでした。

例えば、2010年に若者の間で「ウォール街占拠デモ」が起きた時には、多くの民主党支持者は「チェンジと言っているオバマが大統領なのに、どうして反抗するのか?」とか「経済合理性を否定しても何も動かない」などと冷ややかな視線を送っていたのでした。

左派の存在感は大きく変化

ですが、2020年から21年の現在は、国内雇用、そして尊厳ある労働の確保、生存権としての公的医療保険、プライバシー権の見地からのGAFA批判などで「妥協を拒否」する左派は、国政レベルでの存在感に成長しています。そして、彼らが存在する理由も、方向性も見えている訳です。そして彼らとの協調できる点を見出さなくては政権が動かないということも、バイデンとその周辺は理解しています。

環境政策に相当力を入れるであろうこと、例えば高速鉄道で航空を代替する政策を意識して、純粋左派ではなくても新世代のブティジェッジを運輸長官に指名したのも全て左派を意識したものです。もちろん、今回の選挙が証明したように、中道派と左派は「トランプ主義という共通の敵」があるので連携できるという面は大きく、その点では今後何が起きるのか分かりません。

一方で、政策面であまりにも左派に寄せ過ぎれば、共和党の議員団が徹底抗戦に回るでしょうし、市場も失望して米社会全体が不安定になるでしょう。その点も踏まえたうえで、左派を抱えた一種の連立政権だという点で、オバマ政権とは全く異質のものになると考えられます。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

フィリピン、制裁対象国からの石油調達へ米国と協力

ビジネス

エネルギーショック対策、減税や補助金は有効でない=

ビジネス

特定のペース念頭に置かず政策判断、大方の委員が認識

ワールド

豪2月CPI、前月比横ばい コアインフレは予想下回
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆保険」を達成した中国の医療保険の実態とは
  • 2
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」モナコ舞踏会に見る富と慈善
  • 3
    【クイズ】2年連続で「世界幸福度ランキング」で最下位になった国はどこ?
  • 4
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店…
  • 5
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」…
  • 6
    スペイン王室、王妃と王女の装いに見る「母から娘」…
  • 7
    「買ったら高いじゃん?」アカデミー賞会場のゴミ箱…
  • 8
    意外と「プリンス枠」が空いていて...山崎育三郎が「…
  • 9
    「日本人のほうが民度が低い」を招いてしまった渋谷…
  • 10
    まずサイバー軍が防空網をたたく
  • 1
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 2
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え時の装いが話題――「ファッション外交」に注目
  • 3
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が発生し既に死者も、感染源は「ナイトクラブ」
  • 4
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 5
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 6
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 7
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 8
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ…
  • 9
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 10
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラ…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story