コラム

バイデンの副大統領候補、黒人女性議員ハリスを軸に最終調整か?

2020年07月30日(木)15時30分

そして、未来の副大統領というよりも、未来の大統領になるかもしれないという位置づけから、この人選に関しては報道が過熱気味となっています。今週は、メジャーな政治サイトのポリティコが「ハリス氏に決定」という予定原稿を間違ってアップするという「事件」まで起こりました。

また、記者会見に際してバイデン氏が「ハリス氏について聞かれた場合に備えた」メモを用意していて、それが偶然にカメラマンの撮影した高精細な写真に写ってしまって内容が明るみに出るというハプニングもありました。その内容ですが、

・「怨念はもうない」(予備選での罵倒合戦の後腐れはないということで、おそらくバイデン側がそう思っているということなのでしょう)
・「私と妻のジルと一緒に選挙運動をした」(ジル夫人がハリス氏を嫌っているという噂がありましたが、それを打ち消すという意味かもしれません)
・「才能あり」(大統領に昇任可能という意味だと思います)
・「選挙戦には大きな助け(great help)」(非常に強い表現です)
・「私は彼女を大変に尊敬している」(指名を匂わせた言葉です)

ということで、ますます「本命はハリス氏」という報道が加熱しています。それにしても、そんなメモの内容が流出するというのは妙です。一つの推理をするのであれば、民主党の一部に「ハリス氏への抵抗感」があり、それを打ち消して「ハリス指名への納得感」を醸成するために「故意に撮影させた」という可能性もあります。

その「抵抗感」というのは、例えば選対の中で「副大統領候補選考委員」を務めているというクリス・ドッド元上院議員の批判です。ドッド氏は、予備選でバイデン氏を罵倒した過去について「彼女には反省がなかった」とした上で「ハリス氏は自分が大統領になることしか考えていない」と批判。これに呼応して大口献金者から「ハリス氏への嫌悪感」が出ているという報道が流れました。「メモ流出事件」は、そうしたネガティブ報道を打ち消す効果を狙ったものかもしれません。

民主党の歴史の中では、1945年のF・D・ルーズベルト死去におけるトルーマン昇任、1963年のケネディ暗殺によるジョンソン昇任という経験を記憶にとどめているだけに、今回の副大統領候補には、やはりバイデン氏の言う「才能」は最低条件になると思います。とにかく、数日内に迫っている発表に注目したいと思います。

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プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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