コラム

日産・ルノー・三菱連合が、「自動運転車開発」提携でグーグルにのみ込まれる?

2019年02月07日(木)15時00分

4点目として、私が一番心配しているのは、「グーグルというシリコンバレー勢力の主導」による巨大自動車産業グループができてしまう可能性です。何が問題かというと、自動運転化に対して「前のめり」になってしまう懸念を感じるからです。

グーグルの自動運転プロジェクトはその初期から「自動運転による死亡事故率が、人間の運転による死亡事故率を下回ることが証明できれば、実用化を進めるべき」という主張を掲げてきました。一見すると正論に聞こえます。ですが、人命を扱う自動運転というのは、同時に社会全体による安心感や信頼感が得られなくては前進は不可能です。そのような数字上のメリットだけで暴走したのでは国際社会の理解は得られないと思います。

その意味で、一つの巨大自動車産業グループが、シリコンバレー勢力に主導される形で業界再編にのみ込まれるというシナリオには、どうしても懸念を感じざるを得ないのです。現時点では、まだ正式な発表がされたわけでもありませんが、注目するべき動きです。

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プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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