コラム

北朝鮮問題が今のアメリカで話題にならない理由

2018年09月20日(木)11時30分

ということは、本来は国際協調主義であるはずの、民主党支持者や、共和党の本流なども、国内問題に関心が向かうばかりで、その結果として、南北会談の進展などには無関心ということになっているのです。

ただ、気をつけておかねばならないには、その裏には、一つのスケジュール感覚があるということです。今回の南北会談では、米国のトランプ大統領が「北朝鮮外交で一定の努力をした」ことへの評価がされています。そして、この9月中旬というタイミング自体が、「米中間選挙へ向けてトランプを後押し」するかのようなメッセージ性を持っているわけです。

また、金正恩の言う「非核化の日程」については、当初は米大統領選に重なる2020年という期限が意識されていましたが、現在は、2021年という言い方に変わっています。「非核化という成果を見せて大統領選へ」というストーリーが、「トランプを当選させないと非核化は実現しないぞ」というストーリーに変わっているかのようにも見えます。いずれにしても、非核化交渉のスケジュールは、米国の政治日程を極めて意識したものになっています。

そのことを踏まえて、仮にこの11月の中間選挙で共和党、特にトランプ派の候補たちが惨敗した場合には、恐らく「大統領弾劾」へと米議会は進んでいく可能性があります。仮に、弾劾あるいは、その直前での大統領辞任ということになれば、アメリカの北朝鮮外交は完全に白紙に戻される可能性があります。アメリカの世論やメディアが、北朝鮮外交に関して極めて冷静なのは、その確率を計算しているという要素もあります。

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プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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