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「トランプ減税」成立は米政治の大きな転換点
2つ目は、議会共和党とホワイトハウスの関係です。共和党のトランプ政権が発足してからほぼ1年が経過したわけですが、ホワイトハウスと議会は「つかず離れず」どころか、何度も衝突を繰り返してきました。ですが、今回は違います。議会共和党と大統領は一致して、この大胆な税制改正を実現したのです。
こうなると、さすがに「トランプ降ろし」は難しくなります。ホワイトハウスの側としても、9月中旬に原案を公開した際には、ここまで共和党が協力して原案に近い改正ができるとは思っていなかったと思います。もちろん、今後もイザコザは続くとは思いますが、この税制改正を契機として「議会共和党は、ドナルド・トランプから逃げられなくなった」ということは言えます。
3つ目は、大統領の側としては、2018年の中間選挙への「手応え」を感じているのだと思います。もちろん景気の拡大は大前提ですが、仮に世論調査の支持率が低くても、これだけの「バラマキ」、しかも「減税というキャッシュのバラマキ」をやるわけですから、政治的には攻勢がかけられるとふんでいるのは間違いありません。
中間選挙で上下両院の過半数を確保、特に下院での絶対多数を確保していれば、弾劾裁判による罷免という可能性はかなり低くなります。2018年の選挙は、この点で非常に重要であり、そのための大減税だったわけです。
4つ目ですが、共和党全体としては、これは「アイデンティティの危機」になります。というのは、共和党の掲げるイデオロギーは「小さな政府論」であり、それは単に減税を志向するというだけでなく、「財政規律」という考え方を伴っていたのですが、ある意味で今回、その「財政規律」を「かなぐり捨てた」からです。
ということは、90年代にニュート・ギングリッチ下院議長(当時)を中心に、クリントン政権に「均衡予算」を迫った経験、そして2009年から「小さな政府」と「財政規律」を要求してオバマ政権に挑戦した「ティーパーティ(茶会)」運動などに見られた共和党の路線は、ここで否定されたことになります。
5つ目としては、ここまで大規模な歳入カットを決めたということは、アメリカが自ら「そう簡単には戦争に踏み切れない」という縛りをかけたことを意味します。朝鮮半島でも、中東でも大規模な軍事作戦が起きる可能性は低くなったと考えられます。
2017年のアメリカの政局は、この税制改正案可決という大きな政治的事件と共に終わりを告げようとしています。2018年も、引き続き筋書きのないドラマが続いていくことになるのでしょう。
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