コラム

動き出したトランプ次期政権、「融和」か「独自色」か?

2016年11月15日(火)16時20分

 政権人事の「独自色」ということでは、家族の参画というのも打ち出しています。一見すると公私混同でおかしい話ですが、ビジネスも子供たちとの集団指導体制でやってきているので、仕方ない面もあるように思います。ですが、14日に報じられたように、国家の最高機密に関して、大統領と同じレベルの情報を子どもたちにも提供して欲しいという意向が次期大統領の周囲から出ているという問題は、賛否両論を引き起こしています。

 ファミリーの関連では、一家のビジネス、つまり「トランプ・オーガニゼーション」というホテル・リゾートの運営会社をどうするのかが問題になっています。経済政策に関する最高指揮権も持っている大統領が、ファミリーのビジネスを続けていては利益相反になるので、子供の何人かに完全に承継してしまうか、あるいは持ち株を完全に信託化するしかないと言われていますが、この点はまだ決まっていません。

 今週17日には、安倍首相が会談を行う予定ですが、とにかく早くこの時期にというのは悪いアイディアではないと思います。新政権準備の作業にスピード感が出ている中で、日本の外交として珍しく機動的な動きなっていると言えるでしょう。

 トランプ新政権が人事も政策もできあがっていないこの時期に、堂々と胸を張って会うのは決してマイナスではありません。ただし、胆力と、瞬発力で負けては、ナメられてしまいます。日本人独特の謙遜や卑下というのは、このリアリズムの塊のような人物には通用しないと考えたほうがいいでしょう。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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