コラム

この週末にトランプ陣営が抱え込んだ5つのトラブル

2016年08月02日(火)17時10分

 これは、大問題になりました。その後もカーン氏との「対立」は続き、カーン氏の「あなたは私達のような犠牲を払っていない」という批判に対して、トランプが「自分も様々な犠牲を払ってきた」と反論するなど応酬は尾を引きました。そこで「トランプは戦没者の一家をバカにしている」という批判が、共和党内からも上がるようになっているのです。

 二つ目としては、31日の日曜に、ニューヨークのタブロイド紙『ニューヨーク・ポスト』に、21年前のメラニア夫人(結婚前の当時はメラニア・クナウス)の「フルヌード写真」が掲載されてしまった問題です。アメリカでは、いくらタブロイド版とはいえ、ここまで露骨な写真を表紙に持ってくることは普通しないのですが、FOX系列の『ポスト』としては、完全に確信犯という感じで掲載しました。

 同紙は、翌日の1日にも同じような別の写真をスクープしているのですが、トランプは「スルーの構え」です。「あれは、私と出会う前のもので、ヨーロッパの人はああいう写真が好きだから、自分は気にしていない」というコメントをしていますし、陣営のスタッフからは「人体美を表現した良い写真だ」という意味不明のコメントまで飛び出しています。こうなると、本人も陣営も、メラニア夫人を「守る」意思があるのか分からないという感じです。

 一方で政治的な暴言も止まりません。三つ目には、この週末にトランプは、「ウクライナにロシアは侵攻していない」とか「クリミアの人々はロシアが来て喜んでいる」といった「ロシア寄りの発言」をしており、これも炎上しています。これとは別に、トランプの選挙参謀であるポール・マナフォートが、以前にウクライナのヤヌコビッチ前大統領のアドバイザーをやっていた疑惑が取り沙汰されています。

【参考記事】トランプはプーチンの操り人形?

 つまり、2004年の「オレンジ革命」で親ロ派のヤヌコビッチが打倒された際に「アドバイザー」として雇われ、選挙での復権へ向けての助言をしたり、西側へのロビイングをしたりしていたというのです。仮にそのマナフォートがプーチンの意向を受けているようですと、これは「話がつながりすぎる」わけです。

 さらにこれはネタとしては小さいのですが、四つ目としては、トランプは遊説をするたびに、地域の消防署の悪口を言っていて、それが無視できなくなってきているという問題があります。というのは、選挙集会を行う場合に、仮に収容人員が1000人の会場を借りて、そこに2000人が来てしまうと、「会場にスペースがあるのに、消防署が規制するので入れない人が出る」と文句を言うのです。

 29日のコロラド・スプリングスでも「だからこの国はダメなんだ」などと、ブツブツ文句を言っていました。実は、その数分前にトランプとその側近は、エレベーターが故障して閉じ込められ、消防隊員に救出されているのですが、その直後にこういうメチャクチャなことを言われたので、消防はカンカンだったそうです。1日のオハイオ州のコロンバスでも、収容人員をめぐる同様のトラブルがあり、ここでも消防を怒らせていました。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

スコットランド首相が辞任、連立政権解消後の混乱受け

ワールド

イスラエル軍、ラファなどガザ各地を空爆 少なくとも

ワールド

G7エネ相、35年までの石炭火力廃止で原則合意 3

ビジネス

米ボーイングが起債で100億ドル調達、需要旺盛=関
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 8

    「瞬時に痛みが走った...」ヨガ中に猛毒ヘビに襲われ…

  • 9

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 10

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    「誰かが嘘をついている」――米メディアは大谷翔平の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story