コラム

アメリカの大衆文化は保守的なだけに「息が長い」

2015年10月22日(木)16時00分

10月21日の「バック・トゥー・ザ・フューチャーの日」にちなんで、全米各地で人々が集まった Lucy Nicholson-REUTERS

 今週のアメリカでは3つの話題がトレンドになっています。まず10月21日は、往年のSF映画『バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2』(ロバート・ゼメキス監督、1989年)で、主人公たちがタイムマシンに乗って行く「未来の日付」ということで、映画の出演者たちがテレビに出演したり、オバマ大統領自らがこの日を「バック・トゥ・ザ・フューチャーの日」と呼んで祝福ツイートを出したりして、かなりの盛り上がりを見せていました。

 映画が公開されたのは89年の11月ですから、ほぼ26年、つまり四半世紀を超えた年月が流れたわけで、当然のことながら、当時「2015年には実現しているだろう」という設定として表現された「未来の予言」については、当たっていれば当たっていたなりに、また、外れたのであれば外れたなりに興味深いわけです。

 なかでも話題になったのが、映画の中で野球のシカゴ・カブスが、2015年にワールドシリーズで優勝するという「予言」がされていたということです。というのは、最終的にカブスはメッツに4連敗してワールドシリーズ進出の望みは断たれてしまったのですが、この「映画の予言」が話題になっていた時点ではカブスは絶好調で、久しぶりにリーグ優勝決定戦に進出、まさにその「予言が現実のものとなるかもしれない」ということで、シカゴでは盛り上がっていたからです。

 ですが、最終的には映画の中で優勝すると予言された「2015年10月21日」に自分たちの本拠地リグリー・フィールドで、ライバルのNYメッツがリーグ優勝を果たすのを見せつけられることとなったわけですから、因縁は深まったと言えるでしょう。

 その因縁とは何かというと、この蔦のからまる歴史的な球場であるリグリー・フィールドに関わる「ヤギの呪い」です。これは1945年の事件で、いつも自分の飼っているヤギを連れて試合観戦に来ていた老人に対して、ヤギの臭いが強烈だということで、球団が「ヤギを連れての観戦禁止」を申し渡したたところ、激怒した老人は「二度とここ(リグリー・フィールド)でワールドシリーズが開催されることはないに違いない」と言い放ったというものです。この年を最後に、カブスはワールドシリーズに出場できていないのです。今回もまた、その「呪い」を解くことはできなかったのです。

 一方で、この10月19日には、夕方のNFLのフットボールの中継の際に、年末公開の『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(エピソード7)の本格的な予告編が公開され、こちらも大きな話題となっています。「エピソード4、5、6」の三部作完結後、16年の空白を経て「エピソード1、2、3」が制作され、それからさらに10年の空白の後に「エピソード7」からの新三部作がスタートするというのですから、期待感は相当なものです。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ヘッジファンド、銀行株売り 消費財に買い集まる=ゴ

ワールド

訂正-スペインで猛暑による死者1180人、昨年の1

ワールド

米金利1%以下に引き下げるべき、トランプ氏 ほぼ連

ワールド

トランプ氏、通商交渉に前向き姿勢 「 EU当局者が
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「史上最も高価な昼寝」ウィンブルドン屈指の熱戦中にまさかの居眠り...その姿がばっちり撮られた大物セレブとは?
  • 2
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機」に襲撃されたキーウ、大爆発の瞬間を捉えた「衝撃映像」
  • 3
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別「年収ランキング」を発表
  • 4
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    【クイズ】次のうち、生物学的に「本当に存在する」…
  • 7
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 10
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 9
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 10
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story