コラム

伊勢志摩サミット、首脳のパートナーの「外交」に何を求めるか

2015年06月10日(水)11時42分

 2016年のG7は、日本の伊勢志摩での開催が決定しました。今回のドイツでのエルマウ・サミットでは、中国の東シナ海、南シナ海での振る舞いの問題や、ロシア問題、ISIL、温暖化が重要課題でしたが、1年先にはどうなっているかは分かりません。

 何しろ、アメリカは大統領選真っ最中になるわけですし、そもそも米中関係にしても今秋の習近平訪中が実現するのであれば、現状とは大きく異なる様相になってくる可能性があります。また、ロシアの姿勢も、今後の原油価格がどう転ぶかによって大違いですし、中東に関してもサウジのサルマン国王の登場により風景はかなり変わりつつある中、全く予想がつきません。

 そこで、今回は「サミット」に付き物の、「パートナー外交」について、考えてみたいと思います。

 前回日本で行われた2008年の洞爺湖サミット(この時期はロシアが参加していてG8でした)では、福田貴代子首相夫人(当時)が主宰した「夫人外交」が、十二単の着付け鑑賞であるとか、豪華な茶会という内容がたいへんな悪評を買いました。

 また、これはサミットではありませんが、2010年に横浜で行われたAPECでは当時の菅伸子首相夫人(当時)が主宰し、こちらも「坐禅体験」とか「ハイテク丹後ちりめんファッション」などやはり「ズレ」た企画になっていました。(当時の本欄参照)

 この点に関してですが、今回発表された伊勢志摩サミットでも、早速「海女を売り込め」とか「首脳夫人には真珠を」などという動きが始まっているようです。もちろん人口減経済の中で、こうしたイベントが地域の経済活性化につながればという地元の祈るような気持ちは分かります。

 ですが、「海女」や「真珠」がサミットの「パートナー外交」の道具になるという発想法は、どう考えても21世紀のものではありません。

 まず「海女」ですが、日本における海女の文化は、戦後になって着衣潜水が定着する中で、国内では好奇の目で見る風潮はなくなりました。テレビドラマの『あまちゃん』が描いたように、自然との共生を志向した独特の漁業形態として、国外から「海女とは何か?」と問われれば、胸を張って誇るべき文化と思います。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ米政権、一部帰化者の市民権剥奪強化へ=報道

ワールド

豪ボンダイビーチ銃撃、容疑者親子の軍事訓練示す証拠

ビジネス

英BP、豪ウッドサイドCEOを次期トップに任命 現

ワールド

アルゼンチンの長期外貨建て格付け「CCC+」に引き
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】「日の丸造船」復権へ...国策で関連銘柄が軒…
  • 9
    9歳の娘が「一晩で別人に」...母娘が送った「地獄の…
  • 10
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story