コラム

18歳への有権者教育とは何か?

2015年06月23日(火)10時58分

 女性の結婚年齢を16歳から18歳に引き上げる案もあるようですが、これも同年代の男女による世論形成ということがあってよく、また世論を作っていくための議論に参加することが「有権者教育」になるのです。

 この問題に加えて、公職選挙法の問題もあるでしょう。18歳は有権者だから「ネット選挙運動」をしてもいいが、17歳だと違法行為になるという法律が現状ではあります。

 ニュースをよく知らない18歳の高校生が、投票の参考にしようと、ニュースを良く知っている17歳の友達に「この前、汚職疑惑があったのはA候補だっけ?」と「口頭で聞くのはいい」が、LINEでの会話で17歳の高校生が「B候補だよ。だから入れるならA候補だよ」と答えたら「法律に違反する」、という制度は正当なのかどうなのか。そんな制度があるとして、ネットを知らない高齢者の偏見が原因なのか、それとも、制度の不自然さを受け入れなくてはいけないほど悪用の危険性があるのか、まさに当事者として、それこそSNSで議論してもらってはどうでしょう。

 さらに教育と雇用の問題もあります。大学受験制度、奨学金の問題、そして卒業後の雇用の問題など、若者が当事者として政治参加する際に「切迫した問題」は多くあると思うのです。そうした問題に関する討論も必要でしょう。

 有権者意識というのは、こうした議論に参加する中から育まれるのだと思います。少なくとも、若者をバカにしたようなイラスト入りの「制度ができてから告知する官製パンフレット」を作ったり、「17歳以下の選挙運動を取り締まる」ことが「有権者教育」ではないでしょう。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

エヌビディア決算に注目、AI業界の試金石に=今週の

ビジネス

FRB、9月利下げ判断にさらなるデータ必要=セント

ワールド

米、シカゴへ州兵数千人9月動員も 国防総省が計画策

ワールド

ロシア・クルスク原発で一時火災、ウクライナ無人機攻
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋肉は「神経の従者」だった
  • 3
    【写真特集】「世界最大の湖」カスピ海が縮んでいく 砂漠化する地域も 
  • 4
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 5
    顔面が「異様な突起」に覆われたリス...「触手の生え…
  • 6
    一体なぜ? 66年前に死んだ「兄の遺体」が南極大陸で…
  • 7
    『ジョン・ウィック』はただのアクション映画ではな…
  • 8
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    株価12倍の大勝利...「祖父の七光り」ではなかった、…
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 3
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 4
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 5
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 6
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 7
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 8
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 9
    「このクマ、絶対爆笑してる」水槽の前に立つ女の子…
  • 10
    3本足の「親友」を優しく見守る姿が泣ける!ラブラ…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story