コラム

軍事パレード直前に爆発事故が続く中国の皮肉

2015年08月24日(月)15時40分

 9月3日、北京で抗日戦争と反ファシスト戦争勝利70周年を記念した軍事パレードが行われるが、今回のパレードはまったく普通ではない。パレードを極めて重要視している共産党政府は、当日の北京を青空と白い雲の好天にするため、北京市と天津市、河北省、山西省、内モンゴル自治区、河南省と山東省の7省・直轄市の1万を超える工場に生産停止・生産制限を命じ、9000余りの工事現場の工事を停止させた。農家の「かま」での煮炊きによる排煙すら禁じた場所もある。北京市ではナンバーに基づく車両の通行制限も続く。

 共産党政府は治安維持にも相当敏感になっていて、地下鉄では最高レベルの警戒を実施。公衆トイレに行くにも実名登録が必要になった。百万人近いボランティアを治安要員として動員されているが、あきれることに事前に決まっていたかなりの数の文芸イベントや新書の発表会、展覧会までが中止に追い込まれた。

 しかしパレードの準備が進んでいた8月12日、天津市塘沽港で世界を揺るがす化学物質の大爆発が起きた。22日には山東省淄博の化学工場で爆発が発生。一連の爆発事故は、共産党政府の監督能力不足が制御不能のレベルに至っていることを暴露した。天津の大爆発で政府はいつも通り真相を隠し報道をコントロールしようとしたが、今日にいたるまで空気の汚染がどれくらい深刻なのか、そして死者が何人なのか不明なままだ。

 20日、爆心地から6キロ離れた天津の川で魚が大量に死んでいるのが見つかり、9・4キロの地点にある「エコシティ」では多くの植物が雨に濡れた後、枯れているのが発見された。政府は魚の大量死は過去にも何度もあったと抗弁し、天津市環境観測センターも水質検査でシアン化合物が検出されなかったと説明した。しかしグリーンピースが調べたところ、魚が大量死した川の水から1リットル当たり0・01〜0・02ミリグラムのシアン化合物が検出された。

 ここ数日、共産党系メディアでは軍事パレードを賛美する報道があふれている。「常歩行進で200メートル、速歩行進で1000メートルも動きはブレない。装備行進の時間の誤差は0・3秒以内、距離の誤差は10ミリ以内だ」。共産党政府はさまざまなデータを使い、嬉々としてその厳格さと正確さをアピールする。しかし、彼らは大惨事の死者数や魚が大量死した原因をはっきり把握できず、山東省の化学工場の爆発も防ぐことはできなかった。

 強権を賛美する一方で、生命を軽視するのが最近の中国社会の特徴だが、これは1949年以来の中国の特徴でもある。「ファシズム」の定義を調べたとき、私は驚くべき発見をした。ファシズムの理論的根拠は「人種主義」、「国家至上主義」、「指導者権威主義」、「生存圏主義」にある。これはまさに今の中国ではないか? あるネットユーザーはこう皮肉っている。「今回の反ファシズム記念行事を通じて、国民のファシズムに対する理解はいっそう深まったよ」

<次ページに中国語原文>

プロフィール

辣椒(ラージャオ、王立銘)

風刺マンガ家。1973年、下放政策で上海から新疆ウイグル自治区に送られた両親の下に生まれた。文革終了後に上海に戻り、進学してデザインを学ぶ。09年からネットで辛辣な風刺マンガを発表して大人気に。14年8月、妻とともに商用で日本を訪れていたところ共産党機関紙系メディアの批判が始まり、身の危険を感じて帰国を断念。以後、日本で事実上の亡命生活を送った。17年5月にアメリカに移住。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

1月百貨店売上は2.3%増、中国客は3割減=百貨店

ワールド

日銀審議委員候補、高い識見と学識経験で人選=城内経

ワールド

メルツ独首相が訪中、関係深化で李強首相と一致

ビジネス

バイトダンス、企業価値5500億ドルに ゼネラル・
今、あなたにオススメ
>
MAGAZINE
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
2026年3月 3日号(2/25発売)

フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 2
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 3
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 4
    3頭のクマがスキー客を猛追...ゲレンデで撮影された…
  • 5
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
  • 6
    最高裁はなぜ「今回は」止めた?...トランプ関税を違…
  • 7
    【クイズ】サメによる襲撃事件が最も多い国はどこ?
  • 8
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 9
    「IKEAも動いた...」ネグレクトされた子猿パンチと「…
  • 10
    2月末に西の空で起こる珍しい天体現象とは? 「チャ…
  • 1
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 2
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 3
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 4
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
  • 5
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 6
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 7
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由.…
  • 8
    100万人が死傷、街には戦場帰りの元囚人兵...出口な…
  • 9
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 10
    ロシアに蔓延する「戦争疲れ」がプーチンの立場を揺…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 6
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story