コラム

中国人が大騒ぎする「安倍晋三の祖父の軍刀」問題

2015年04月24日(金)14時54分

pepper042402.jpg 最近、中国メディアのある文章が中国人読者たちの目をひきつけた。タイトルは「日本の中国侵略の動かぬ証拠~安倍晋三の祖父の軍刀を暴く」だ。

 この軍刀はもともと、北京市内の高校で今月開かれた抗日戦争勝利70周年記念展の中で展示されたものだ。展示されたのは、岸のほか伊藤博文、東条英機などの軍刀108本。岸信介のものとされる軍刀にはいわゆる春画が刻まれており、共産党系メディアはこれを大いに笑いものにした。たくさんのブログもこういった官製メディアの記事を転載して、岸と軍刀を嘲笑した。

 ただ、この問題に潜む問題を中国のネットユーザーは見逃さなかった。軍事オタクたちが、あいついで矛盾点を指摘したのだ。「岸信介は文官だから軍刀を持てないはずだ」「岸の文官としての経歴から見て、中国に財物を置いたまま帰国することはないだろう」......。

 私は今回の展示品を提供した人物についても非常に興味を持った。調べると、提供者は「愛国収蔵家」の王雪という人物。王雪氏は中国の民間から3万件余りの日本関連の文物を収集した。驚くべきことに、そのうち2000件余りが「日本の国宝級」だという。

 ちなみに、今月までに日本の文化庁が認定した国宝の数は1093件しかない。王雪氏の数字の問題についても、中国ネットユーザーは遠慮なく皮肉った。いわく、「中国に残された『国宝』の数が日本にあるものより多い......それなら、結局侵略したのは誰だったんだ?」

プロフィール

辣椒(ラージャオ、王立銘)

風刺マンガ家。1973年、下放政策で上海から新疆ウイグル自治区に送られた両親の下に生まれた。文革終了後に上海に戻り、進学してデザインを学ぶ。09年からネットで辛辣な風刺マンガを発表して大人気に。14年8月、妻とともに商用で日本を訪れていたところ共産党機関紙系メディアの批判が始まり、身の危険を感じて帰国を断念。以後、日本で事実上の亡命生活を送った。17年5月にアメリカに移住。

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