プレスリリース

衛星画像データを活用した、植生および生物の広域推定技術の開発に着手

2025年03月27日(木)13時00分
日本電信電話株式会社(以下 NTT)、株式会社バイオーム(以下 バイオーム)、NTTコミュニケーションズ株式会社(以下 NTT Com)、NTTコムウェア株式会社(以下 NTTコムウェア)、株式会社NTTデータ(以下 NTTデータ)、株式会社NTTドコモ(以下 NTTドコモ)の6社は、リモートセンシング※1による植生※2および生物の広域推定※3技術の開発に着手します。衛星画像データ解析技術※4をはじめとするNTTグループのアセットおよびバイオームが保有する国内最大級850万件以上のリアルタイム生物データベース「BiomeDB」を掛け合わせることで、生物多様性のモニタリングを支援するための広域かつ継続的な植生および生物の関連データ収集・分析手段を確立し、社会のネイチャーポジティブ※5実現に貢献します。

1.背景
世界経済の総付加価値額※6のうち44兆米ドル(世界の総GDPの約半分)が森林や土壌などの自然資本へ依存※7しており、これを支える生物多様性の劣化はかつてないスピードで進んでいます※8。そのような背景のもと、2022年の生物多様性条約第15回条約国会議(CBD COP15)にて採択された「昆明・モントリオール生物多様性枠組」※9を契機に、世界的に生物多様性の保全やネイチャーポジティブ分野への関心が高まっています。
また、日本においても「ネイチャーポジティブ経済移行戦略」※10が策定され、今後は企業・行政・市民などの多様な主体による、ネイチャーポジティブ経済の実現に向けた取り組みが期待されています。
その実現に向け、企業はTNFD※11情報開示要請等の国際要請にもとづいて、現状の自然資本の状態を把握/評価し、目標に向け継続的なモニタリングや保全活動を行う必要があります。しかし、現状把握やモニタリングにおいて、オープンデータのみでは更新頻度や精度が十分でない場合もあり、大きな負担のかかる現地調査を継続的に行わなければならないという課題があります。こうした課題を解決するため、6社は実証を開始します。

2.実証の概要
(1)実証内容
衛星画像データとバイオームの保有する生物データ、実フィールドデータ(自治体保有の植生、生物データ等)を活用することにより、高頻度・広域かつ国際的な議論に沿った粒度で、特定地域の植生および生物の種類や分布状況の推定を行います。

<実証のイメージ>
画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/431228/img_431228_1.png


(2)フィールド実証の概要
■NTTドコモの「ドコモ泉南堀河の森」(大阪府泉南市)での実証
開始時期:2025年1月
目的:衛星による森林及び周辺生態系把握可能かを検証
※NTTドコモは実証を通じて、自然共生サイト※12認定された「ドコモ泉南堀河の森」の保全推進に向けた生物多様性の可視化、経年モニタリングに関する新たな手法探求および将来的なドコモ基地局周辺のモニタリングへの活用に対する可能性の検証を行います。

■アサヒグループジャパン株式会社の社有林「アサヒの森」(広島県庄原市)での実証
開始時期:2025年4月
目的:ビジネスユースケース・広域推定技術の確立
※アサヒグループジャパンは実証を通じて、アサヒグループ環境基本方針に基づく「アサヒの森」でのサステナブルな生物多様性の可視化、経年モニタリングに関する新たな手法探求のための検証を行います。

3.各社の役割
NTT:プロジェクト全体推進
バイオーム:生態系データ提供、生物多様性に関する知見の提供、サービス化の検討
NTT Com:フィールド実証の実施、ビジネスユースケースの検討、サービス化の検討
NTTコムウェア:総合データの解析、精度の検証
NTTデータ:高解像度衛星画像データ(AW3D)※13の提供
NTTドコモ:フィールド提供、ビジネスユースケースの検証

4.今後の展開
今後は、自治体のランドスケープ戦略※14策定や、企業のネイチャーポジティブ経営への移行支援、統合報告書作成時のデータ収集支援など具体的なビジネスユースケースの検討を行います。また、幅広い自治体・企業にヒアリングを行い、自治体・企業の生物多様性戦略策定支援、自然資本の定量評価に寄与できる「高カバレッジ・高精度な生物多様性プラットフォーム化」を目指します。
なお、この度の開発着手に合わせて、株式会社NTTドコモ・ベンチャーズ(本社:東京都港区、代表取締役社長:安元 淳)は、同社が運用するファンドを通じて、バイオームへ出資※15を行いました。今回の出資を通してバイオームとNTTグループとの連携を深め、ネイチャーポジティブに資するビジネスの検討や研究での連携など、新たな価値創造に向けた取り組みを進めます。


※1:リモートセンシングとは、遠く離れた場所から対象物の形状や性質を測定する技術のことです。
※2:植生とは、地球上の陸地において、ある場所に生育している植物の集団、例えば森林や草原、耕作地、荒原などを指します。
※3:広域推定とは、人工衛星や航空機などの機器で取得したデータを解析し、広域の状況を推定することです。
※4:NTTグループは、宇宙ブランド「NTT C89」のもと、衛星データを提供しています。「NTT C89」は日本電信電話株式会社の商標です。「NTT CONSTELLATION 89 PROJECT」の略称であり、社会へのソリューション提供を通じて宇宙関連事業の拡大および宇宙産業全体の発展に貢献していく取り組みです。
画像2: https://www.atpress.ne.jp/releases/431228/img_431228_2.png
URL:https://group.ntt/jp/aerospace

※5:「ネイチャーポジティブ(自然再興)」とは、生物多様性の損失を止め、回復軌道に乗せることを指します。
※6:総付加価値額とは、企業が事業活動によって生み出した価値の総額です。
※7:「ネイチャーポジティブ経済移行戦略 参考資料集(2024)」(環境省ホームページ)
https://www.env.go.jp/content/000213094.pdf
※8:「生物多様性と生態系サービスに関する地球規模評価報告書(2019)」(IPBESホームページ)
https://files.ipbes.net/ipbes-web-prod-public-files/2020-03/ipbes_global_assessment_report_summary_for_policymakers_jp.pdf
※9:「昆明・モントリオール生物多様性枠組」とは、2022年12月に採択された新たな生物多様性に関する世界目標で、2030年までのミッションとして「生物多様性の損失を止め反転させる」すなわち「ネイチャーポジティブ(自然再興)」が掲げられました。
※10:「ネイチャーポジティブ経済移行戦略」とは、2024年3月に閣議決定された企業や金融機関、消費者の行動を変えて自然を保全する経済に移行するビジョンと道筋を示した戦略です。
「ネイチャーポジティブ経済移行戦略(2024年3月)」(環境省ホームページ)
https://www.env.go.jp/content/000213092.pdf
※11:TNFD(Taskforce on Nature-related Financial Disclosures)とは、自然関連財務情報開示タスクフォースのことで、企業・団体が自身の経済活動による自然環境や生物多様性への影響を評価し、情報開示する枠組みの構築を目指し取り組む国際イニシアティブです。
※12:自然共生サイトとは、「民間の取組等によって生物多様性の保全が図られている区域」を国が認定する区域のことです。認定区域は、保護地域との重複を除き、「OECM」として国際データベースに登録されます。
出典:環境省ホームページ
https://policies.env.go.jp/nature/biodiversity/30by30alliance/kyousei/
※13:AW3D(全世界デジタル3D地図)については以下をご覧ください。
http://www.aw3d.jp/
※14:ランドスケープ戦略とは、一定の地域や空間において土地・空間計画をベースに多様な人間活動と自然環境を総合的に取扱い、課題解決を導く戦略のことです。
※15:NTTドコモ・ベンチャーズ報道発表「生物多様性ビッグデータを運営する株式会社バイオームへ出資」(2025年3月27日)
https://www.nttdocomo-v.com/news/5awfsopbnv/


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プレスリリース提供元:@Press
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