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【写真特集】東南アジアの過酷な漁業 その実態を見よ
OVERFISHING IN SOUTHEAST ASIA
Photographs by Nicole Tung

東南アジア最大級のサメ市場であるインドネシア・ロンボク島のタンジュン・ルアール港では、絶滅危惧種を含む多様なサメが水揚げされる。政府はサメと漁師の生活を守るため、サメ漁の規制を強化している(2025年6月9日)
<中国海軍の支配、労働力搾取、違法操業、環境破壊ーー日本にもつながる水産物の国際サプライチェーンの一端に巣くう漁業の闇>
東南アジアは世界の漁業における中心的存在で、漁獲量はその半分以上を占める。同時に、違法操業や労働搾取といった問題の影響を最も強く受ける地域でもある。だが特に海上は監視の目が届きにくく、業界の実態は不透明だ。
写真家のニコール・トンはタイ、フィリピン、インドネシアで9カ月間にわたって取材を行い、漁業規制の後退、地政学的圧力、移民労働者の劣悪な労働環境などの問題を浮き彫りにした。
タイでは2015年の「海の奴隷労働」報道後の改革で労働環境が改善されたが、政府と業界の結び付きが強まるなかで改革が後退しかねない現状を捉えた。フィリピンでは地政学的緊張に焦点を当て、中国が海上で勢力を拡大しているため漁場へのアクセスが制限され、漁師が収入を失っている様子を報告。インドネシアでは借金を背負っての船上労働、賃金未払い、絶滅危惧種の乱獲などを取材した。
トンの写真は9月4日、優れた調査報道に贈られる仏「カルミニャック・フォトジャーナリズム賞」を受賞した。そこに収められた過酷な現状は海洋生態系と沿岸社会の未来にとって大きな脅威だ。
Photographs:©Nicole Tung for Fondation Carmignac
撮影:ニコール・トン
香港生まれ。2009年にニューヨーク大学を卒業。中東地域の紛争や地震、香港の民主化デモ、ロシアによるウクライナ侵攻などを取材し、米ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポストなどの主要メディアで活躍中。25年の仏「カルミニャック・フォトジャーナリズム賞」を受賞
【連載21周年/1000回突破】Newsweek日本版 写真で世界を伝える「Picture Power」2025年9月16,23日号掲載
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