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【写真特集】過疎化が招くスペインの山火事と生活破壊
EMPTY LAND
Photographs by ADRA PALLÓN

91歳のオルガはスペイン北西部ルーゴ県の村で独り暮らしをしていた。だが都会に住む息子が高齢の母を心配し、1カ月前から同居してくれるようになった(2022年5月)
<老人だけが残された村々では、木材や製紙原料となる燃えやすいマツやユーカリが大量に植林されている>
私はスペイン北西部ルーゴ県を拠点に、過疎化と環境問題の関係を調査するプロジェクトに取り組んでいる。
過疎化が始まったのは1960年代頃。それ以前はほとんどの土地は農地であり、周囲に広がる自生の森林は山火事を食い止める防火帯としての役割を果たしていた。
だが村々で過疎化が進むと老人が残されて、人口構成だけでなく、土地の構成も変わった。耕作放棄地に政策の後押しを受けた林業者が入り、木材や製紙原料の調達のためにマツやユーカリを大量に植林。共に燃えやすい樹木で、つまり過疎化と山火事は密接につながっている。
今回の撮影地であるルーゴ県は欧州の中でも、山火事が頻発する地域だ。大企業は住む人のいなくなった土地への植林や風力発電所設営を狙い、防火帯や農地が消失している。
零細農家による長年の伝統的な営みは、環境と調和していた。だが強欲な市場がそれに終わりを告げ、こうした環境問題を引き起こしている。
――アドラ・パジョン(写真家)
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