コラム

アメリカ人だからか、語りきれなかったみたい

2015年09月24日(木)18時00分

2)靖国参拝に関して:僕はその意味を勘違いしている

 確かに理解しきれているとは言えないだろう。大学で比較宗教学を専攻して、20年以上日本に住んで、今も勉強中の僕は、おそらく世界中の外国人の中では、まだわかっている方じゃないかと思うけど、まだまだわからないこともある。それを常に忘れずにいようとしている。

 しかし、コラムの内容は僕の見解ではなく、世界の多くの人が持っている見解を示しているつもりだ。靖国神社や霊魂は日本の皆さんにとってどのような意味合いを持っているのかということや、War Shrine(戦争神社)と訳されていることが正しいかということでなく、世界のメディアが靖国参拝をどう報道しているのか、そしてその報道が世界でどのように見られているのか、それだけを伝えている。

参考リンク:
ガーディアン紙の記事、2015年4月

3)ドイツのお詫びに関して:ドイツは侵略戦争を謝っていない

 まず、ナチスドイツの政治体制も、悪事の規模や体質も、その裏にあった理念も、まったく日本と違う。さらに戦後の戦争裁判や「再教育」、責任の捉え方(ナチスのせいにしたり)なども大きく異なる。

 相違点が多すぎてドイツと日本を比較することに無理がある。読者からこういった指摘が多かったし僕もそのとおりだと思う。不公平だと思うから、コラムに「残念ながら」と入れたのだ。皆さんも僕も、納得がいかないかもしれないが、比較されている事実を意識すると、色々わかってくることがあると思う。

 そして、「ドイツはホロコーストを謝っても、ほかの国に謝っていない、侵略戦争を謝っていない」という主張もよく聞く。確かにユダヤ人の皆さんに対するお詫びが目立つが、本当にドイツの首相は侵略し占領した国々に対してはお詫びしていないのか、検証しよう。

 たとえば先日のコラムでも取り上げたヴァイツゼッカー首相の演説はホロコーストのことを重視し細かく述べている。が、そのほかに「We commemorate all nations who suffered in the war(戦争で苦しんだすべての国を追悼する)」や「We recall the victims of the resistance movements in all the countries occupied by us(われわれに占領された国々で抵抗して犠牲になった皆さんを思い出す)」とも言っている。ポーランドやソ連などの国名を挙げているし「invasion(侵略)」や「invaded(戦略した)」という言葉を用いている。「The initiative for the war came from Germany(開戦の責任はドイツにある)」とも述べている。紛れもなく侵略戦争のことを謝っているように、僕には聞こえる。この演説は1984年だった。

プロフィール

パックン(パトリック・ハーラン)

1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『パックン式 お金の育て方』(朝日新聞出版)。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

アップル、時価総額4兆ドル突破 好調なiPhone

ビジネス

アングル:米財務省声明は円安けん制か、戸惑う市場 

ワールド

イスラエル首相、ハマスが停戦違反と主張 既収容遺体

ビジネス

ユーロ高、欧州製品の競争力を著しく損なう 伊中銀総
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大ショック...ネットでは「ラッキーでは?」の声
  • 3
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」にSNS震撼、誰もが恐れる「その正体」とは?
  • 4
    「平均47秒」ヒトの集中力は過去20年で半減以下にな…
  • 5
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 6
    楽器演奏が「脳の健康」を保つ...高齢期の記憶力維持…
  • 7
    「信じられない...」レストランで泣いている女性の元…
  • 8
    「死んだゴキブリの上に...」新居に引っ越してきた住…
  • 9
    中国のレアアース輸出規制の発動控え、大慌てになっ…
  • 10
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 4
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 5
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 8
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 9
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 10
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 9
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story