コラム

【大江千里コラム】だから僕はポップスを手放した

2020年05月29日(金)16時55分

コロナ危機で、夢を持って海外に飛び出した人たちが日本に帰れない状況にある。だが僕は、ポップスを置いてニューヨークに渡ったことを後悔したことなど一度もない。ここはジャズの街だ。喧噪や嬌声などのインプロ(即興)が街のあちこちで起こるたび、曲の尺もコンセプトも伸縮自在に変わる。それは3分間の咀嚼の世界ではなく、この瞬間に即興的に生まれる喜怒哀楽が詰まった世界なのだと思う。

「ジャズと僕とニューヨーク」はようやく手をつないで虎視眈々と次を狙う。いま僕は、あの頃のポップスから遠く離れたロックアウト状態にある名も無い人生の駅にいる。10年先には、ジャズのその先にある老若男女が狂喜乱舞するような「本物のポップス」を書ける日が来るかもしれない。それを見据えながら。

<本誌2020年5月26日号掲載>

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プロフィール

大江千里

ジャズピアニスト。1960年生まれ。1983年にシンガーソングライターとしてデビュー後、2007年末までに18枚のオリジナルアルバムを発表。2008年、愛犬と共に渡米、ニューヨークの音楽大学ニュースクールに留学。2012年、卒業と同時にPND レコーズを設立、6枚のオリジナルジャズアルパムを発表。世界各地でライブ活動を繰り広げている。最新作はトリオ編成の『Hmmm』。2019年9月、Sony Music Masterworksと契約する。著書に『マンハッタンに陽はまた昇る――60歳から始まる青春グラフィティ』(KADOKAWA)ほか。 ニューヨーク・ブルックリン在住。

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