コラム

コロナとさえ戦わない絶望の国ニッポン

2021年05月03日(月)07時41分
 東京五輪・パラリンピック組織委員会の橋本聖子会長

「感染状況次第では五輪中止もありうる」という当たり前の一言さえタブーで言えない異常さ Issei Kato-REUTERS

<コロナ危機が始まって一年、既得権益との戦いも国民的な議論もなく、ただただ戦いから逃げてきた結果、日本は大変なことになっている>

私は、日本に絶望した。

第一に、コロナ危機はいまや日本だけだ。世界ではコロナ危機は過去のものとなり、いまだに苦しみ、先が見えていないのは、インドと日本だけだ。

第二に、オリンピックなどという不要不急、重要性の低いイベントに国が囚われてしまっている。物事の優先順位がつけられない国は、普通は、滅亡する。歴史においてはそうだった。

第三に、専門家も政治家も嘘ばかり付いている。意図的な嘘なのか、物事をあまりに知らなくて間違っているだけなのか、よくわからないが、いずれにせよ、当たり前のことすらまったくわかっていない。間違ったことを言い続けている。

誰も何もやる気がない

第一の点は、3つに分けられる。1)コロナ対策そのものが最悪だし、2)医療体制は整っているはずなのに、実効性が低く、3)コロナ危機の程度が軽いにもかかわらず、経済への悪影響は、世界最高水準。悪い、悪い、悪いの三拍子だ。

日本のコロナ危機は、ワクチンの遅れと、イギリス型変異ウイルスが理由と思われているが、そうではない。変異ウイルスは世界中で発生しており、それは警戒が必要ではあるが、どの国も同じである。第二に、韓国でもワクチン接種は欧米よりも遅れている。当たり前だ。欧米の新型コロナによる死者と東アジアでの死者の数は比較にならず、緊急性の高い欧米、イスラエルで進んだだけで、感染者が少ない日本で、ワクチンが欧米よりも遅れるのは当たり前だ。

問題は、コロナ対策が、実際にはまったく何も行われていないことにある。

スマートフォンの感染者接触アプリCOCOAもデジタル庁もどこかに消えてしまい、保健所のDX(デジタルトランスフォーメーション)も導入したが、機能していない。検査も増えない。

医療の体制も混乱の極みだ。政府そしてとりわけ知事たちはこの1年、テレビに出る以外に何をしてきたのか。

医療体制が混乱しているのは、医療システムを社会全体のために動員する仕組みもやる気も存在しないからだ。とりわけ、やる気のほうが大きい。

病院と医師たちは、一部(せいぜい半分)の良心的で献身的な人々の善意、ボランティアに依存するばかりで、過半の病院と医師たちは新型コロナと無関係である。コロナに追われて手薄になった病院や医師たちをフォローする体制もないし、一肌も脱がないし、これをチャンスとばかり儲けようとして、結果的に社会に貢献することもない。

怪しいPCR検査、簡易検査の広告が出るぐらいで、触らぬウイルスに祟りなし、といった雰囲気だ。

プロフィール

小幡 績

1967年千葉県生まれ。
1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現財務省)入省。1999大蔵省退職。2001年ハーバード大学で経済学博士(Ph.D.)を取得。帰国後、一橋経済研究所専任講師を経て、2003年より慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應ビジネススクール)准教授。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。新著に『アフターバブル: 近代資本主義は延命できるか』。他に『成長戦略のまやかし』『円高・デフレが日本経済を救う』など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

赤沢再生相、ラトニック米商務長官と3日と5日に電話

ワールド

OPECプラス有志国、増産拡大 8月54.8万バレ

ワールド

OPECプラス有志国、8月増産拡大を検討へ 日量5

ワールド

トランプ氏、ウクライナ防衛に「パトリオットミサイル
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚人コーチ」が説く、正しい筋肉の鍛え方とは?【スクワット編】
  • 4
    孫正義「最後の賭け」──5000億ドルAI投資に託す復活…
  • 5
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    「詐欺だ」「環境への配慮に欠ける」メーガン妃ブラ…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 10
    反省の色なし...ライブ中に女性客が乱入、演奏中止に…
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 5
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 6
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 7
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 8
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とん…
  • 9
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 10
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story