コラム

GoToイートは菅総理の信念の180度逆で根本的に誤り

2020年10月17日(土)19時30分

5月26日、新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言が解除され、客が戻ってきた上野の居酒屋 Issei Kato-REUTERS

<GoToイート食事券も飲食店への家賃補助も、人気店や馴染みの店の足を引っ張り、質の悪い店を助ける政策だ>

GoToイートの不手際や、不正に近い濫用がワイドショーの話題になっているようだが、そうなるに決まっている。何のために、外注しているのかよくわからない。

しかし、それ以前に、GoToイートということ自体が間違っている。

GoToトラベルも、このキャンペーンが終わったら需要が反動減となるので、本当に目先の一時しのぎに過ぎず、キャンペーンがなくても来るような顧客を失うだけなのでよくない、という議論は前回したが、GoToイートはさらに悪い。

500円や1000円をループして永遠に利用するセコイ客の被害は、そのような客で店が溢れ、店はむしろ儲からなくなる。

これは以前から同じことで、6月、飲食が戻らない、と言われていた時でも、私のヒアリング調査、あるいは個人的な体験からすると、通常は予約でいっぱいのような店は、少し予約が取りやすくなる程度で、コロナでも店は客で常に満席だ。いつも満員の店は、コロナの影響で客が減ったと言っても一番悪いときでも通常の8割程度は客は来ていた。そして、7月には9割以上に戻り、8月で感染が再拡大したと言われても、まったくそれは変わらず、通常の9割から通常通りに戻っている。

これは飲食店ではコンセンサスだそうで、駄目な店にも、通常は、人気の店が満員で入れない客が流れていたから、一応客がいただけで、もともと駄目だった店が、人気の店に入れなくてあふれてくる客がいなくなり、閑古鳥が鳴いているだけで、まともな店は客は減っでも最大で1割程度ということだそうだ。

いずれは潰れる店を延命するだけ

飲食がつぶれるというが、もともと飲食は良くつぶれるので、それで貸す側も値引きはしない。いつでもまた別の店が入るし、いつものことだ、という対応だったようだ。そして、政府の家賃補助は、これらのビルオーナーを安泰にするだけで、もともといつかたたまなければならない店が、コロナで決断しかかっていたのが、決断を先送りにして、家賃補助が終わればやはり廃業するような店の延命をしているにすぎず、しかも彼らの収入にはならず、ビルオーナーが安泰になっただけだ。

つまり、菅総理のいう、自助共助公助に、見事に180度反している。

自助できるところの邪魔をして、守る価値のないところを、国民全体の税金を投入して守っている。しかも、セコイ客に悪用されている。産業の新陳代謝を妨げ、日本経済の活力も成長力も削いでいる。

最悪、弱いものを守る政策だ、というなら、ネットで予約する仕組みは最弱な古い店には機能しない。はやっていないチェーン店が使うだけだし、サイトが儲かるだけだ。

ワイドショーの同情を引いたのは、サイトも開設していないような、スナック、小料理屋、定食屋、飲み屋であり、彼らでない中途半端な商業的に駄目なチェーン店とセコイ客にカネが流れているだけなのだ。

最悪だ。即刻やめるか、菅総理は自助という言葉を信念から外してほしい。

*この記事は「小幡績PhDの行動ファイナンス投資日記」からの転載です

プロフィール

小幡 績

1967年千葉県生まれ。
1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現財務省)入省。1999大蔵省退職。2001年ハーバード大学で経済学博士(Ph.D.)を取得。帰国後、一橋経済研究所専任講師を経て、2003年より慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應ビジネススクール)准教授。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。新著に『アフターバブル: 近代資本主義は延命できるか』。他に『成長戦略のまやかし』『円高・デフレが日本経済を救う』など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米ミシガン大消費者信頼感、1月確報値は改善 物価高

ワールド

EU、ウクライナに発電機配布 ロ攻撃で電力不足深刻

ワールド

国連人権高等弁務官、イランにデモ弾圧停止要求 人権

ワールド

EXCLUSIVE-イスラエル、ガザ入境制限を検討
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:「外国人問題」徹底研究
特集:「外国人問題」徹底研究
2026年1月27日号(1/20発売)

日本の「外国人問題」は事実か錯誤か? 7つの争点を国際比較で大激論

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 2
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な一部」ではないと指摘
  • 3
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味を帯びる「超高齢化」による「中国社会崩壊」
  • 4
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 5
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 6
    40代からは「積立の考え方」を変えるべき理由──資産…
  • 7
    コンビニで働く外国人は「超優秀」...他国と比べて優…
  • 8
    老化の9割は自分で防げる...糖質と結び付く老化物質…
  • 9
    宇宙人の存在「開示」がもたらす金融黙示録──英中銀…
  • 10
    湿疹がずっと直らなかった女性、病院で告げられた「…
  • 1
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 2
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 3
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な一部」ではないと指摘
  • 4
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 5
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 6
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 7
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味…
  • 8
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 9
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 10
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 5
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story