コラム

ついに日本は終わった

2020年03月06日(金)14時20分

日本はもともとそういう危機に弱い。太平洋戦争もジリ貧で、座して経済的な敗北を受け入れなければならないときに、我慢できずに、勝てないギャンブルをした。

2011年3月11日もそうだ。原発事故は、反省するが、起きてしまった事故を受け入れ、淡々と処理するしかなかったのに、首相自ら福島第一原発現地に乗り込んでいくというような無駄な動きによって、事故を拡大し、世界的な悪評を高め、風評を世界的にも、国内的にも広げ、無駄に経済的危機を拡大した。

今回の危機は、第2次大戦、2011年の震災に比べれば、たいした危機ではない。SARSでも新型インフルエンザでも起きたことで、世界的に政治、社会の意思決定、判断、感情的な反応レベルがヒステリックになっている中で、経済的に無駄な危機が起きているだけのことだ。しかし、その経済的危機は、これまでのどれよりも大きくなる可能性がありそうに見える。危機自体は、軽微なものなのに、それへの対応を誤り危機を前代未聞のウイルスによる経済危機にするのは(実際はスペイン風邪の方が大きいが)愚か以外の何物でもない。

ではどうするか。

建設的に提案しよう。諸悪の根源のスタッフ、側近、贋の専門家を交代させよ。そして、中立的で、まっとうなスタッフ、真の専門家を官邸に招集せよ。

リーダー自身を交代させるという案も理論的にはありうるが、妥当ではない。危機のさなかにリーダーは交代すべきではない。さらに、今回は、リーダー自身の問題ではない。リーダーのいくつかの意思決定が決定的に誤っていただけだ。しかも、その誤りは、私的利害から出たものではなく、危機の中での正義感から来る焦りが誤った動きとなってしまった、という行動経済学から見れば、典型的な行動バイアスだからで、このバイアスは次のリーダーも持ちうるものであり、このバイアスを取り除くのは、リーダー自身が自分で除くのではなく、スタッフとの関係、関係構造を変えることによってしか実現しないからだ。

それでも官邸が生まれ変わらなかったら、そのときが、リーダーが交代するときだ。

【参考記事】一斉休校でわかった日本人のレベルの低さ
【参考記事】やっぱり日本は終わりだ

プロフィール

小幡 績

1967年千葉県生まれ。
1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現財務省)入省。1999大蔵省退職。2001年ハーバード大学で経済学博士(Ph.D.)を取得。帰国後、一橋経済研究所専任講師を経て、2003年より慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應ビジネススクール)准教授。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。新著に『アフターバブル: 近代資本主義は延命できるか』。他に『成長戦略のまやかし』『円高・デフレが日本経済を救う』など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

韓国、ウォン安への警戒強める 企画財政相「必要なら

ワールド

マクロスコープ:意気込む高市氏を悩ませる「内憂外患

ワールド

ドイツ、連邦・州のドローン防衛を統合 ベルリンに初

ビジネス

次期FRB議長は「大幅利下げを信じる人物」=トラン
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    【銘柄】「日の丸造船」復権へ...国策で関連銘柄が軒…
  • 8
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 9
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 10
    9歳の娘が「一晩で別人に」...母娘が送った「地獄の…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 5
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story