コラム

遂に「日本売り」を招いた新型肺炎危機──危機を作り出したのはウイルスでも政府でもなくメディアと「専門家」

2020年02月25日(火)14時20分

世界から見た新型肺炎危機の「震源地」、ダイヤモンドプリンセス号(横浜、2月12日) Kim Kyung-hoon-REUTERS 

<日本は新型コロナウイルス危機の震源は中国の武漢と思ってるが、世界には横浜のダイヤモンド・プリンセス号が震源だと思われている>

2月24日。日本は振り替え休日で、テレビのニュースはひたすら新型肺炎でうんざりだったが、夜になるとネットのマーケットニュースは危機を伝えていた。

米国株価指標、ダウ平均は1031ドルの下落という大暴落。ナスダックの下落率はそれ以上で、3.7%の大暴落。3連休明けの日本市場の株価は日経平均の下落は1000円を超えるものになるのは確実だ(これをみなさんが読んでいる頃は大暴落のあと、乱高下しているだろうが)。

当然だ。

これまで、株価が暴落しなかったほうがおかしい。

中国では工場も学校も実質閉鎖。再開したとはいうものの、学校はすべてオンラインで自宅から。誰も外出していない。新型肺炎自体の影響は見極めが必要で、まもなくピークは過ぎるだろうが、これだけ過剰反応すれば、経済はストップし、株価は暴落するのが必然だ。

新型肺炎に対しては人々は過剰反応したが、株式市場では投資家は過少反応だった。

しかし、日本市場は米国市場よりも少し前にその気配があった。

日本売りのサイン

2月20日早朝、米国市場で円は急落。ドル円は一気に111円台に突入した。

私は、これを日本売りの危機のサインと捉え、日本株は暴落すると予想し、円安だと喜んで日本株が上がるようなら株はすべて売るべきだと書いた(筆者のブログ参照)。

実際、日経平均は400円以上上げたが、その後大幅下落し、前日比ではプラス79円だったが、その日のピークからは300円以上下げた。21日は懲りずに東京市場では日経平均は100円以上上げて始まったが、間もなく下落に転じ、その日の高値からは200円以上下げて終わった。

私は、自分の短期的予想が当たったことを喜んでいるのではない。日本の投資家に危機意識がなさすぎるのではないか、という危惧が的中してしまったことを憂いているのだ。

日本では新型肺炎と言えば武漢だが、世界では東京の(実際は横浜だが)ダイヤモンドプリンセス号だ。中国では新型コロナウイルスの抑え込みに成功したが、日本では混乱が生じているとみられている。それにとどめを刺したのが、感染症対策の専門家とみられている大学教授が、船内に入り、対策チームや政府の対応がいかに杜撰で不適切が世界に向けて発信したことだ。これが世界の金融市場で日本売りが始まるきっかけを作った可能性がある。株価についてはともかく、為替はドル高が進んだが、20日早朝はユーロドルは落ち着いており、日本円だけが売られたので、日本売りであることは間違いがない。これがプリンセス号の船内レポートによるものであるかどうかはわからない。

プロフィール

小幡 績

1967年千葉県生まれ。
1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現財務省)入省。1999大蔵省退職。2001年ハーバード大学で経済学博士(Ph.D.)を取得。帰国後、一橋経済研究所専任講師を経て、2003年より慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應ビジネススクール)准教授。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。新著に『アフターバブル: 近代資本主義は延命できるか』。他に『成長戦略のまやかし』『円高・デフレが日本経済を救う』など。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

第1四半期の中国スマホ販売、アップル19%減、ファ

ビジネス

英財政赤字、昨年度は公式予測上回る スナク政権に痛

ビジネス

ユーロ圏総合PMI、4月速報値は51.4に急上昇 

ワールド

独、スパイ容疑で極右政党欧州議員スタッフ逮捕 中国
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 3

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバイを襲った大洪水の爪痕

  • 4

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    冥王星の地表にある「巨大なハート」...科学者を悩ま…

  • 9

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 10

    ネット時代の子供の間で広がっている「ポップコーン…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 7

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story