コラム

週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった

2025年01月30日(木)16時18分

意図的に「誤認させた」可能性

少し話がややこしくなってきたので、例をあげて説明したい。これから述べるのは無根拠な憶測ではなく、現時点で報じられている内容に基づいた推測の一つである。

たとえば、中居正広とX子さんの間に、以下のようなやり取りがあった可能性が考えられる。やり取りは電話だったかもしれないし、LINE等だったかもしれない。中居正広本人ではなく、マネージャー等が連絡を取った可能性もある。あくまでも一例、一つの可能性としてお読み頂きたい。

中居「週末にAさんと一緒にみんなで飲み会やるんだけど、X子さんも来ませんか?」
X子「Aさんも来られるんですか?」
中居「うん、Aさんが『みんなで飲もうよ』って言ってて、X子さんにも是非来て欲しいんだって」
X子「分かりました。私も参加します」

そして、当日の集合時間直前に中居がX子さんに対して「ごめん、今日は大雨のせいでAさんは来られなくなったみたい」と伝えたとしたら、X子さんの脳内でA氏の立ち位置はどうなるだろう。(Aさんに騙された!)と思い込み、そう誤認してしまうのではないか。

このように中居がX子さんに嘘をつき、A氏が関与していると誤認させた可能性があると私は見ている。あるいは、ここまで露骨でなくても「いつも通りAさんのセッティングした会なのだろう」とX子さんが思い込み、中居も敢えて説明しなかったのかもしれない。

直近のバーベキューもA氏から誘われており、X子さんから見れば、中居とA氏は常にセットで動いている。実際、事案の発生した翌月には、入院中のX子さんのもとをA氏が訪れ、中居からの見舞い品を持ってきたという。

記事を読むと、A氏が会食をセッティングしたのではないかという疑惑を非常に強く感じる。恐らく、X子さんの頭のなかではそう認識されており、知人に対してもそのように話したのだろう。知人の話を聞いた文春記者も、その可能性が高いと考えたに違いない。

だが、記事を最初から最後まで何度読んでも、「A氏がX子さんを誘った」と明言する文章はない。書かれているのは、A氏の関与を強く疑わせる知人の証言だけだ。

そう考えると、文春の出した訂正文はまったく不正確であり、私から見れば「訂正の訂正」を出すべき事案と言える。

プロフィール

西谷 格

(にしたに・ただす)
ライター。1981年、神奈川県生まれ。早稲田大学社会科学部卒。地方紙「新潟日報」記者を経てフリーランスとして活動。2009年に上海に移住、2015年まで現地から中国の現状をレポートした。現在は大分県別府市在住。主な著書に『ルポ 中国「潜入バイト」日記』 (小学館新書)、『ルポ デジタルチャイナ体験記』(PHPビジネス新書)、『香港少年燃ゆ』(小学館)、『一九八四+四〇 ウイグル潜行』(小学館)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

FRB追加利下げは慎重に、金利「中立水準」に近づく

ビジネス

モルガンS、米株に強気予想 26年末のS&P500

ワールド

ウクライナ、仏戦闘機「ラファール」100機取得へ 

ビジネス

アマゾン、3年ぶり米ドル建て社債発行 120億ドル
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国か
  • 3
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地「芦屋・六麓荘」でいま何が起こっているか
  • 4
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    山本由伸が変えた「常識」──メジャーを揺るがせた235…
  • 7
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 8
    経営・管理ビザの値上げで、中国人の「日本夢」が消…
  • 9
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 10
    反ワクチンのカリスマを追放し、豊田真由子を抜擢...…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 10
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story