最新記事
シリーズ日本再発見

「カジノ法案」で日本への観光客は本当に増えるのか

2017年01月13日(金)15時38分
高口康太(ジャーナリスト、翻訳家)

AndreyKrav-iStcok.

<2016年末、「カジノ法案」とも呼ばれるIR推進法案が成立した。「経済効果が大きい」「いや、ギャンブル依存が増えるだけ」と賛否両論だが、どんな影響があるのか。先行する他国のカジノも参考に考えてみると...> (写真:日本のIRのモデルとされるシンガポール。有名な高級リゾートホテル「マリーナ・ベイ・サンズ」では、床面積が全体の5%に過ぎないカジノ施設が利益の大半を生み出している)

【シリーズ】日本の観光がこれで変わる?

 2016年12月15日、国会で「カジノ法案」が成立した。未明の強行採決で決着したこともあり注目を集める騒ぎとなったが、約1カ月が過ぎた今こそ冷静に考える機会なのではないか。

「カジノ法案」によって、日本には何がもたらされるだろうか。推進派が言うように、日本への観光客が増えるのだろうか。

 報道では「カジノ法案」なる名称が繰り返されていたが、法案の正式名称は「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」(略称「IR推進法案」)だ。

 特定複合観光施設とはなにか。法案では「カジノ施設及び会議場施設、レクリエーション施設、展示施設、宿泊施設その他の観光の振興に寄与すると認められる施設が一体となっている施設であって、民間事業者が設置及び運営をするもの」と規定されている。いわゆる統合型リゾート(IR=Integrated Resort)だ。

 IR法案の成立によって、国は「特定複合観光施設区域の整備を推進する責務」を負うこととなった。今後、カジノ設置やギャンブル依存症対策などの法整備を進めなければならないという意味だ。つまり、今回の法案でそのままカジノが解禁されるわけではない。

商用観光客誘致とカジノのジレンマ

 カジノは日本に必要なものだろうか。まずは推進者の意見を見ていこう。

 IR法案を推進してきた国際観光産業振興議員連盟の岩屋毅衆議院議員(自民党)は著書『「カジノ法」の真意――「IR」が観光立国と地方創生を推進する』(KADOKAWA刊、2016年10月)で、「カジノはあくまで脇役にすぎません。その目的は日本の『観光立国』化にあり、それによって日本経済の持続的な成長を可能にすることにあります」(「はじめに」より)と説明し、IR推進法の目的はMICE誘致のための施設であるIRの開発にあると主張する。

 MICEとはMeetiing(会議・研修・セミナー)、Incentive Tour(報奨旅行・招待旅行)、ConventionまたはConference(大会・学会・国際会議)、Exhibition(展示会)の頭文字をとった言葉で、商用観光客の誘致を目的としている。

 国際会議の開催件数では国際会議協会(ICCA)の2015年統計で日本は世界3位、アジア・オセアニア1位。国際団体連合(UIA)の2015年統計で世界5位、アジア3位を記録している。

 堂々たる順位に思えるが、「現在は中国や韓国、シンガポールという国々での国際会議が急速に増えており、日本が徐々に競り負けるようになってきている」と岩屋議員は著書で危機感を示す。日本の存在感低下はMICE招致に欠かせない大型の会議場や展示場の不足だという。

 これらの施設は維持費がかさむため単体では採算が取れない。そこでカジノや劇場を併設することで利益をあげて維持費を捻出するというIR方式が世界的に普及してきた。

 3棟の建物を屋上でつないだ形が印象的で、今やシンガポールの象徴ともなった統合リゾートホテル「マリーナ・ベイ・サンズ」では、カジノ施設が占める床面積は全体の5%に過ぎないが、利益の大半を生み出している。カジノが施設維持の柱となっているわけだ。

【参考記事】カジノに懸けたシンガポール(1/2)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イランがイスラエルに無人機とミサイル発射、革命防衛

ワールド

バイデン政権、27.7万人の学費ローン74億ドルを

ワールド

焦点:ナスカのミイラが「宇宙人」に、止まらぬ古代遺

ワールド

政治の信頼回復と先送りできない課題以外考えず=解散
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:オッペンハイマー アメリカと原爆
特集:オッペンハイマー アメリカと原爆
2024年4月16日号(4/ 9発売)

アカデミー作品賞映画がアメリカに突き付けた、埋もれた記憶と核兵器のリアル

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入、強烈な爆発で「木端微塵」に...ウクライナが映像公開

  • 3

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...当局が撮影していた、犬の「尋常ではない」様子

  • 4

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 5

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 6

    エリザベス女王が「誰にも言えなかった」...メーガン…

  • 7

    ロシア軍が戦場に乗り捨てた軍用車の「異形」...後ろ…

  • 8

    「結婚に反対」だった?...カミラ夫人とエリザベス女…

  • 9

    『大吉原展』炎上とキャンセルカルチャー

  • 10

    マレーシアの砂浜で、巨大な「グロブスター」を発見.…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入、強烈な爆発で「木端微塵」に...ウクライナが映像公開

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    NewJeans、ILLIT、LE SSERAFIM...... K-POPガールズグ…

  • 5

    ドイツ空軍ユーロファイター、緊迫のバルト海でロシ…

  • 6

    ドネツク州でロシアが過去最大の「戦車攻撃」を実施…

  • 7

    金価格、今年2倍超に高騰か──スイスの著名ストラテジ…

  • 8

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 9

    ロシアの隣りの強権国家までがロシア離れ、「ウクラ…

  • 10

    「もしカップメンだけで生活したら...」生物学者と料…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    巨匠コンビによる「戦争観が古すぎる」ドラマ『マス…

  • 8

    野原に逃げ出す兵士たち、「鉄くず」と化す装甲車...…

  • 9

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中