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シリーズ日本再発見

ラグビーW杯で考えさせられる、日本の「おもてなし力」

2019年10月16日(水)11時00分
高野智宏

今大会の試合会場の中でも、外国人に対し東日本大震災からの復興を最も印象づけることが期待される地域だけに、おもてなしへの取り組みは他の地域以上に熱が入っている。それは、釜石のみならず「オールいわてで盛り上げよう」を合言葉に、県を挙げて取り組んでいる成果だろう。

ユニークなのが、サムライをモチーフとしたキャラクターが外国人に注意事項を伝えるアイコンだ。例えば、温泉施設向けに「NO SWIM SUITS. NO SANDALS.」、飲食店向けには「SORRY NO CARD」などの文字を添えたアイコンを全104種制作。各施設が自由にダウンロードして活用できるようにした。

そうした手厚いもてなしに、訪日外国人たちも大満足の様子。「『試合はもちろん、滞在した釜石の全てが完璧で、どの瞬間を切り取っても最高だった!』と、ウルグアイの方からお言葉をいただきました」と、湯田さんも笑顔で振り返る。

こうしたやりとりが今、全国各地で交わされているのだろう。来年の東京五輪に向けても、大いに参考になりそうだ。

敷地内完全禁煙は外国人を戸惑わせる結果にならないか

そんな訪日外国人向けのおもてなしの1つとして「試合会場に喫煙所が設けられていること」を挙げたら、おかしいだろうか。というのも、今大会を目的に来日する外国人の中には当然、喫煙者も一定数いるはずだからだ。

屋内での喫煙は日本以上に厳格に禁じられながらも、屋外では罰則がないという国はヨーロッパを中心に多い。となれば、喫煙習慣のある外国人客が戸惑わないよう、試合会場に喫煙所に設置するのはおもてなしと言ってもいいのではないか。

組織委員会は喫煙に関する方針を「厚労省の改正健康増進法の構造方針に基づき、原則屋内は禁煙とし、喫煙所は(新たに)設置しない(喫煙専用室でのみ喫煙可)。屋外においても、非喫煙者に配慮した上で(フェンスの設置など)必要な分煙措置がとられた場所に、喫煙場所を設置する」と定めている。

つまり、条件付きながら喫煙を許容するということ。事実、全国12の試合会場全てに喫煙所が用意され、うち4会場では屋内にもこれまでどおり喫煙所が設置されている。

なかでもユニークなのが、ラグビーの聖地、東大阪市花園ラグビー場(大阪府)の屋外喫煙所だ。広さは約220平方メートルと大規模。両サイドにはゴールポストが設置され、円柱形の灰皿が選手のポジションのように並んでいるのである。花園ラグビー場では今大会のために大規模改修工事を実施しているが、この喫煙所も昨年、それに伴ってラグビー競技場ならではのデザインに生まれ変わった。

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東大阪市花園ラグビー場のバックスタンド側喫煙所

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