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シリーズ日本再発見

活字離れの今、この「活字」と印刷の歴史資料を堪能する

2016年09月23日(金)12時55分
高野智宏

 また、1階ミュージアムショップ隣の「P&Pギャラリー」でも、年4回ほど企画展を展開している。「こちらのテーマは歴史ではなく現代。グラフィックデザインやブックデザイン、商品パッケージデザインをさまざまな切り口で展示する。他にも年に1度、グラフィックデザイナーやクリエイティブディレクターの方に最新の印刷技術を活用してもらい、これまでにない表現を獲得していただく作品展『グラフィックトライアル』を開催している」(石橋氏)

 なお現在は、使いやすさを考慮したユニバーサルデザインや、地球環境に配慮した包装材を使用したパッケージなどを紹介する「現代日本のパッケージ2016」展が開催中だ(~11月27日)。

【参考記事】コンピュータを印刷する時代がやって来る?

活字を拾い、版を組んで、印刷機で刷る体験

 印刷の世界を「感じ」「発見」し「理解」してもらうことをテーマに掲げる同館だが、もうひとつのキーワードが「つくる」だ。総合展示ゾーンの一角に設けられたガラス張りの「印刷の家」では、活版印刷を体験できる無料公開講座「つくるコース」を毎週木〜日曜日に開催している。

 一筆箋やコースター、グリーティングカードなど季節で変わるオリジナル印刷物を、活字を拾い、版を組んで、印刷機で刷る一連の活版印刷の工程を体験することができる。自ら選んだ言葉を自らの手で刷る体験に、印刷への理解が進み、また興味も一層と高まることだろう。

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一連の活版印刷作業を体験できる「印刷の家」。「活版印刷を知らない、若い世代の方にも興味を持ってご体験いただいている」(石橋氏)という人気のコーナーだ

「当館は印刷という技術にフォーカスしたユニークな博物館。ごく身近な印刷物がどのように誕生し、どのように発展してきたのか。印刷という技術の誕生以降、それぞれの時代の技術と資料に触れることで、印刷文化を理解いただけると思う」と石橋氏。

 印刷物ならではの手触りやインクの香り。そして、ページをめくることで出合える新たな感動......。芸術の秋、印刷博物館を訪れて、その奥深い世界に触れてみてはどうだろう。


japan160923-data.jpg印刷物博物館
住所:東京都文京区水道1-3-3 トッパン小石川ビル
開館時間:10~18時(入場は30分前まで)
休館日:毎週月曜日(月曜日が祝日の場合は翌日)
入館料:一般300円(企画展開催時は変更あり)
TEL:03-5840-2300
http://www.printing-museum.org/


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