コラム

捕鯨は法廷で白黒付ければいい

2010年06月10日(木)16時34分

 日本の捕鯨をめぐる議論はとうとう法廷に持ち込まれた。

 オーストラリア政府は5月31日、オーストラリア南方の南極海で日本が行っている調査捕鯨の停止を求めて国際司法裁判所(ICJ)に提訴した。日本の調査捕鯨が「実際には商業捕鯨にあたり、国際捕鯨取締条約に違反している」と主張している。

 ところが同じく捕鯨反対の立場を取る他の国々はオーストラリアの提訴に同調していない。アメリカ政府の国際捕鯨委員会代表は、豪シドニー・モーニング・ヘラルド紙の取材に対して「もしオーストラリアが裁判で負ければ、他の反捕鯨国すべても負けることになる」と豪政府の動きに懸念を示し、米政府は外交交渉で捕鯨問題の解決を図っていくという考えを示した。

 やはり捕鯨に反対するニュージーランドのジョン・キー首相も「オーストラリアの提訴にニュージーランドが加わってもおそらく負けることになる」と、提訴への参加には消極的だ。

 そもそも今回の動きには、総選挙を前にして支持率を落としているオーストラリアのラッド政権が、捕鯨反対の国民感情に訴えて支持率を回復させる狙いがあったと見られている。野党陣営からは「政権が抱える問題点から目を逸らそうとしている」と批判される始末。

 ただ、もし日本政府が調査捕鯨の合法性に自信を持っているなら、きちんと法廷に出て主張すればいい。例え法的拘束力がなくてもICJで判決なり勧告的意見なりが出されれば、日本は感情的な捕鯨批判に胸を張って反論できる。

 もし仮に捕鯨を止めろという判決が下ったら、その場合は国際ルールに従うしかない。それでも、まるで日本が国際条約の抜け穴を利用して「姑息に」捕鯨を続けているというイメージを持たれるよりは、はるかに国益にかなうはずだ。

――編集部・知久敏之

このブログの他の記事を読む

プロフィール

ニューズウィーク日本版編集部

ニューズウィーク日本版は1986年に創刊。世界情勢からビジネス、カルチャーまで、日本メディアにはないワールドワイドな視点でニュースを読み解きます。編集部ブログでは編集部員の声をお届けします。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

従来の貿易システム「失われた」 WTO事務局長、改

ワールド

ECB総裁、原油供給混乱の長期化を警告 早期正常化

ワールド

イラン、スペインは「国際法順守」 ホルムズ海峡巡る

ワールド

欧州各国とカナダの防衛費、25年に20%増=NAT
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 2
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終回に世界中から批判殺到【ネタバレ注意】
  • 3
    「俺たちはただの人間だ」――BTSが新アルバム『ARIRANG』に託した想い、全14曲を【徹底分析】
  • 4
    意外と「プリンス枠」が空いていて...山崎育三郎が「…
  • 5
    デンマーク王妃「帰郷」に沸騰...豪州訪問で浮かび上…
  • 6
    まずサイバー軍が防空網をたたく
  • 7
    トランプが誤算? イラン攻撃延期の舞台裏、湾岸諸国…
  • 8
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 9
    「予想よりも酷い...」ドラマ版『ハリー・ポッター』…
  • 10
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」…
  • 1
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公開...母としての素顔に反響
  • 2
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ海峡封鎖と資源価格高騰が業績を押し上げ
  • 3
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラリアの「NVES規制」をトヨタが切り抜けられた理由
  • 4
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 5
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店…
  • 6
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」…
  • 7
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 8
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 9
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」…
  • 10
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story