コラム

坂本龍馬が目指した「抑止力」

2010年05月14日(金)16時38分

 連休中長崎を旅行したら、空港は龍馬人気にあやかった「龍馬定食」や「龍馬カステラ」といった関連商品であふれていた。

 沖縄の米軍普天間基地の移設問題を含め、民主党政権の外交姿勢が問われているこの時期に、明治維新に活躍した坂本龍馬が脚光をあびているのはちょっと面白い。

 5月2日に放送されたNHKの大河ドラマ『龍馬伝』の第18回「海軍を作ろう」で龍馬は、幕府の海軍塾を開いた勝海舟にこんなことを言っている。「西洋に負けない強い海軍を作れば、日本が攻められることはない。戦争をしなくても日本を守ることができる」 要するに海軍が「抑止力」になるという見方だ。

 当時、イギリスをはじめとする西洋諸国がアジアに進出していたことを考えれば、龍馬が抑止力として海軍の増強を目指したことはうなずける。その後日本は、西洋に追いつけ追い越せと「富国強兵」の道を歩んだ。龍馬の海援隊を引き継いだ帝国海軍は、維新から数十年後の日清戦争、日露戦争の時代にはもう「抑止力」とは呼べないだろう。

 鳩山首相の「抑止力」発言が波紋を呼んでいる。沖縄の米軍普天間飛行場の移設問題で、今月に入って「海兵隊が抑止力として沖縄に存在しなければならないとは思っていなかった。学べば学ぶほど(海兵隊が)連携して抑止力を維持していることが分かった」と語り、「今更そんなことを」と批判されている。

 沖縄の米軍基地は何のための「抑止力」なのか。朝鮮半島、台湾海峡の有事にどんな役割を果たすのか。なぜ沖縄になくてはならないのか。これまでうやむやだった問題を議論するいい機会かもしれない。ただ国民がそれを咀嚼して受け入れるには、5月中のタイムリミットは短すぎる。

――編集部・知久敏之

このブログの他の記事も読む

プロフィール

ニューズウィーク日本版編集部

ニューズウィーク日本版は1986年に創刊。世界情勢からビジネス、カルチャーまで、日本メディアにはないワールドワイドな視点でニュースを読み解きます。編集部ブログでは編集部員の声をお届けします。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ米大統領、代替関税率を10%から15%に引

ビジネス

エヌビディアやソフト大手の決算、AI相場の次の試金

ワールド

焦点:「氷雪経済」の成功例追え、中国がサービス投資

ワールド

焦点:米中間選挙へ、民主党がキリスト教保守層にもア
MAGAZINE
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
2026年2月24日号(2/17発売)

帰還兵の暴力、ドローンの攻撃、止まらないインフレ。国民は疲弊しプーチンの足元も揺らぐ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体には濾過・吸収する力が備わっている
  • 2
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面を突き破って侵入する力の正体が明らかに
  • 3
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官が掲げる「新しいスパイの戦い方」
  • 4
    揺れるシベリア...戦費の穴埋めは国民に? ロシア中…
  • 5
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 6
    「窓の外を見てください」パイロットも思わず呼びか…
  • 7
    100万人が死傷、街には戦場帰りの元囚人兵...出口な…
  • 8
    ロシアに蔓延する「戦争疲れ」がプーチンの立場を揺…
  • 9
    「高市トレード」に「トランプ関税」......相場が荒…
  • 10
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 1
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 2
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 3
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体には濾過・吸収する力が備わっている
  • 4
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 5
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由.…
  • 6
    オートミール中心の食事がメタボ解消の特効薬に
  • 7
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 8
    「目のやり場に困る...」アカデミー会場を席巻したス…
  • 9
    100万人が死傷、街には戦場帰りの元囚人兵...出口な…
  • 10
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story