コラム

今年のクリスマスケーキは例年より小さい? 世界的な食品値上がりで笑う国

2021年12月24日(金)15時10分

第二に、コロナの影響だ。コロナ感染の拡大にともなって、昨年から世界中の食糧生産、流通でブレーキがかかってきた。

例えば、パーム油の大生産国マレーシアでは、コロナ感染の拡大でヒトの移動が制限されたことで、パーム椰子の栽培にブレーキがかかった。マレーシアの多くのパーム農園は、バングラデシュやインドネシアなどからの労働者を頼みにしていたからだ。

さらに、ロックダウンや物流関係者の集団感染などの影響で、タンカーなどを用いた食糧運搬が予定通り行かないことも増えている。オーストラリア政府系シンクタンクは、2020年からの1年間で予定通りに目的地に到着できた商船は全体の10%ほどにとどまったと報告している。

マネーと飢餓

これらが品薄感を強め、食品価格の上昇を後押ししてきたわけだが、かといって実際に食糧が不足しているとは限らない。例えば穀物に関して、FAOは生産にブレーキがかかっていることを認めながらも、主要国における余剰備蓄などを考慮に入れれば、世界全体の供給量は十分と試算している。

実際の需要を上回るペースで食品価格が上昇するのは、なぜか。そこには第三の要因、つまり投機的な資金がある。

株式市場が不安定ななか、機関投資家を中心に、「食品が値上がりする」という見込みから食糧への投資が増えている。今年6月、米NASDAQは公式ウェブサイトで「食品価格の上昇から収益をあげている5大ファンド」を特集して紹介したが、ここからも食品値上がりをビジネスチャンスと捉える動きの活発化はうかがえる。

ただし、食糧市場に必要以上に資金が流れ込むことで、世界全体で食品価格はさらに押し上げられる。

その結果、とりわけ貧困国では食糧危機がエスカレートしており、国連児童基金(UNICEF)によると今年7月段階で栄養不良の人口は世界全体で8億1100万人にのぼり、世界人口の約1/10を占めた。このうち1億6000万人はこの1年間で栄養不良になったと推計されており、このペースでの増加は過去最高とUNICEFは警鐘を鳴らしている。

途上国での食糧不足は、各地の政情不安に拍車をかけるものだ。例えば、今年8月に首都カブールをタリバンが制圧したアフガニスタンでは食糧不足が続いているが、その一因には食品価格の高騰があげられる。

「小麦外交」で笑う国

こうした背景のもと、世界の食糧価格は上昇し続けているわけだが、それで笑う国もある。その代表ともいえるのがロシアだ。

プロフィール

六辻彰二

筆者は、国際政治学者。博士(国際関係)。1972年大阪府出身。アフリカを中心にグローバルな政治現象を幅広く研究。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、日本大学などで教鞭をとる。著書に『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)、『世界の独裁者 現代最凶の20人』(幻冬舎)、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、共著に『グローバリゼーションの危機管理論』(芦書房)、『地球型社会の危機』(芦書房)、『国家のゆくえ』(芦書房)など。新著『日本の「水」が危ない』も近日発売

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国こそが「真の脅威」、台湾が中国外相のミュンヘン

ワールド

米中「デカップリング論」に警鐘、中国外相がミュンヘ

ビジネス

ウォルマート決算や経済指標に注目、「AIの負の影響

ワールド

ドバイ港湾DPワールドのトップ辞任、「エプスタイン
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発される中国のスパイ、今度はギリシャで御用
  • 2
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」でソフトウェア株総崩れの中、投資マネーの新潮流は?
  • 3
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活動する動画に世界中のネット民から賞賛の声
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    それで街を歩いて大丈夫? 米モデル、「目のやり場に…
  • 6
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 7
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 8
    川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に─…
  • 9
    【インタビュー】「4回転の神」イリヤ・マリニンが語…
  • 10
    世界市場3.8兆円、日本アニメは転換点へ――成長を支え…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 5
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
  • 6
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 7
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 8
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 9
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」で…
  • 10
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story