コラム

抽象的で理解の難しい『2001年宇宙の旅』が世に残り続ける理由

2025年08月21日(木)15時10分

本部の指示と乗組員との協調という使命の矛盾にHALは耐えられなかった。社会に適応しようとしすぎて自壊する人間のように。

ボーマン船長に解体されながら、HALの最期の言葉は「怖いよ」だ。


同時にキューブリックは、人間の最大の問いをラストに提示した。われわれはどこから来たのか。何者なのか。どこへ行くのか。説明や解説はない。だから観た側が考える。

こうして映画は残る。だって今も考え続けているから。

newsweekjp_20250818094522.png2001年宇宙の旅』(1968年)
©2008 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.
監督/スタンリー・キューブリック
出演/キア・デュリア、ゲイリー・ロックウッド

<本誌2025年8月26日号掲載>

プロフィール

森達也

映画監督、作家。明治大学特任教授。主な作品にオウム真理教信者のドキュメンタリー映画『A』や『FAKE』『i−新聞記者ドキュメント−』がある。著書も『A3』『死刑』など多数。

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