タイトルもストーリーも奇妙だけど、甘さと苦みの配合が絶妙な『ガープの世界』
高校に入学したガープは、看護師として働くジェニーと暮らしながら学校に通う。特に何かに秀でているわけではない。頭の中はまだ体験していない性への興味と始めたばかりのレスリングで強くなることでいっぱい。実に標準的な男子高校生だ。
同じ学校に通う読書家のヘレンに恋をしたガープは、彼女の気を引くために小説を書こうと決意する。そんなガープに刺激されたジェニーも自伝を書き、それが大ベストセラーとなってフェミニズムの旗手として一躍時の人になる。
数年が過ぎて大学教員となったヘレンと売れない作家のガープは結婚し、3人の子供に恵まれる。でも幸福な日常は長く続かない。物は壊れるし人は死ぬ。世界は理不尽と暴力にあふれている。
観終える頃には、この映画の(つまりガープから見た)世界に僕はすっかり浸りながら感応していた。理不尽と暴力に満ちた世界ではあるけれど、それでもやっぱり人は人を愛し、いつかは赦(ゆる)し合い、そして支え合いながら生きてゆく。......甘いことは認める。でもやっぱりジョージ・ロイ・ヒルは外さない。甘さと苦みの配合が絶妙なのだ。
ジェニーを演じるクローズと性転換したフットボール選手を演じたリスゴーは、多くの映画賞で助演賞を受賞した。ヘレンを演じるメアリー・ベス・ハートの可憐さも別格だ。