コラム

映画『村八分』で描かれる閉鎖性は、日本社会の縮図であり原点

2021年11月12日(金)11時00分

こうした映画が今は撮りづらい理由は、吉川家以外の村人(つまり一般の人)たちを加害者として描くことになるからだ。善意のままの加害。だからこそ暴走する。そんな事例はいくらでもある。映画はそれを提示する。社会にけんかを売っている。

テーマはまさしく同調圧力。悩む村人もいるが、自分が村八分になるので声を上げることができない。いわゆる村落共同体的メンタリティー。

まさしく日本社会の縮図であり原点であることを実感した。そして昔の邦画が、これほど果敢に現実に切り込んでいたことも。

magmori211110_murahachibu2.jpg『村八分』(1953年)
監督/今泉善珠
出演/中原早苗、藤原釜足、英百合子、乙羽信子

<本誌2021年11月16日号掲載>

プロフィール

森達也

映画監督、作家。明治大学特任教授。主な作品にオウム真理教信者のドキュメンタリー映画『A』や『FAKE』『i−新聞記者ドキュメント−』がある。著書も『A3』『死刑』など多数。

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