コラム

小津安二郎の『東京物語』はイメージよりもエグイ......でもやっぱり窮屈

2020年11月12日(木)11時40分

でも長男も長女も、実際に情が薄いわけではない。彼らにはそれぞれの家族や生活がある。夫を亡くした紀子は、義兄や義姉に比べれば自由に動ける。両親が尾道に戻ると同時に予期せぬことが起き、実家に集まった子供たちは悲報に号泣する。つまり普通なのだ。でも人の普通な日常は、時としてとても酷薄だ。時には誰かを激しく傷つける。それが世界。それが日常。なるほど。深い。

結論。20代前半で何も考えていなかった僕は、『東京物語』をちゃんと理解できていなかった。その発見はあったけれど、やはり小津映画は、僕にとっては窮屈だ。

NW_MRC_02.jpg『東京物語』(1953年)
監督/小津安二郎
出演/笠 智衆、東山千栄子、原 節子、杉村春子

<本誌2020年11月10日号掲載>

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プロフィール

森達也

映画監督、作家。明治大学特任教授。主な作品にオウム真理教信者のドキュメンタリー映画『A』や『FAKE』『i−新聞記者ドキュメント−』がある。著書も『A3』『死刑』など多数。

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