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日鉄、USスチール貢献は9カ月で800億円 今期は最終赤字へ

2025年08月01日(金)18時22分

 8月1日、日本製鉄は、2026年3月期(国際会計基準)の連結純損益を400億円の赤字(前期は3502億円の黒字)に下方修正した。2024年4月、都内の本社で撮影(2025年 ロイター/Issei Kato)

Ritsuko Shimizu

[東京 1日 ロイター] - 日本製鉄は1日、2026年3月期(国際会計基準)の連結純損益を400億円の赤字(前期は3502億円の黒字)に下方修正した。従来予想は2000億円の黒字だった。米鉄鋼大手USスチールの完全子会社化に伴う収益寄与があるものの、米国で鋼板を製造販売する合弁会社AM/NSカルバートの日鉄持ち分を合弁相手の欧州アルセロール・ミタルへの売却したことによる事業再編損を計上した。

日鉄は6月にUSスチールの完全子会社化を完了。5月に発表した今期見通しには、USスチール買収関連は織り込んでいなかった。

USスチールについては、25年7月―26年3月の9カ月間を連結することになる。米関税の影響は不透明ながら、実力ベースの事業利益で800億円を見込んでいる。

また、来年度以降は年間通じての連結となるため、1500億円程度の事業利益貢献(純利益ベースで500億円)をみている。日鉄の技術などを移管し、高付加価値化商品の拡大などが進む2028年度以降は、早期に2500億円程度の貢献(純利益ベースで1200億円)を実現。設備投資の効果も加わり、シナジー効果のさらなる上積みを図るとした。

森高弘副会長は会見で「買収実現により、グローバル粗鋼1億トン、連結事業利益1兆円に大きく近付けてきている」と述べた。USスチールを加えた現在の粗鋼生産能力は8600万トン、インドですでに決まった投資実施後は9200万トンになる。

USスチールは7月28、29日に新体制で1回目の取締役会を開催。現在、66の課題を洗い出し、8月末までにアクションプランを策定する予定。

<米関税で中国需給ギャップ拡大懸念>

26年3月期の在庫評価差など一時的な要因を除く実力ベースの事業利益は7300億円(前期は7937億円)を見込む。5月時点では6000億円以上としていたが、コスト削減などで500億円積み増し、USスチール分の800億円も加わる。

米関税の影響について、森副会長は「影響は多少出てきている。利益で500億円のマイナスを見込んだ。従来見通しは最大1000億円のマイナスだったため、多少縮んだが不透明感が強い状況に変わりはない」と述べた。USスチールへの効果は「見えてきていないが、間違いなくプラス方向」とした。

鉄鋼業界では、中国からの安い鋼材の輸出によるマイナス影響が続いている。森副会長は「中国の建設・不動産が悪いのは常態化している」とした上で「トランプ関税が強すぎると、中国の製造業も耐え難くなり、需給ギャップがさらに広がる。これが最悪のシナリオ」と懸念を示した。

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