コラム

アマゾンvs.アリババ、戦略比較で分かるアリババの凄さ

2017年11月22日(水)11時15分

世界初のスマートシティを実現するのは「マカオ×アリババ」か?

今年に入って、アリババはマカオ政府とスマートシティ構想のための戦略提携を結んだ。マカオは米国のラスベガスを抜いて世界最大のカジノ都市に成長しているが、近年はシンガポールも強力なライバルであり、数年内には日本も競合市場として立ち上がってくると予想される。

このようななかで、マカオを世界一のカジノ都市に育て上げたマカオ政府の機動力に溢れたスピード経営には定評がある。そのマカオとアリババがスマートシティ構想で手を組んだとするなら、世界初の本格的なものが出来上がると予想せざるを得ないだろう。

私が予想しているのは、2者で発表している「クラウドコンピューティング・センターおよびビッグデータ・センターを建設し、観光業の促進、人材育成、交通管理、医療サービス、都市総合管理サービス、金融技術への応用を目指す」という構想に、実際の展開が留まらないのではないかということだ。

たとえば、ブロックチェーン先進国であるエストニアを凌駕するブロックチェーン先進国をマカオのスマートシティで実現しようと考えているのではないか。より具体的には、エストニアのように国家や国民のインフラ部分を「ブロックチェーン×電子化」することはもとより、ブロックチェーンを活用した新たな仮想通貨を同スマートシティ起点で広げていくことなども視野に入れているのではないかと想像している。

アリババは自動運転にも巨額の投資を行なっていることから、マカオが、バスやタクシーの完全自動運転が実用化される世界最初の都市になるかもしれない。通貨、納税、医療、教育、観光、各種インフラに至るまで、ブロックチェーンとスマホが融合されたスマートシティがマカオで創造される可能性は大きいといえそうだ。

次回は、アマゾン経済圏とアリババ経済圏の戦いのなかで、リアル店舗、フィンテック等の分野での比較分析を行うとともに、アリババの世界進出を阻むリスク要因や問題点についても考察していきたい。


『アマゾンが描く2022年の世界
 ――すべての業界を震撼させる「ベゾスの大戦略」』
 田中道昭 著
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プロフィール

田中道昭

立教大学ビジネススクール(大学院ビジネスデザイン研究科)教授
シカゴ大学ビジネススクールMBA。専門はストラテジー&マーケティング、企業財務、リーダーシップ論、組織論等の経営学領域全般。企業・社会・政治等の戦略分析を行う戦略分析コンサルタントでもある。三菱東京UFJ銀行投資銀行部門調査役(海外の資源エネルギー・ファイナンス等担当)、シティバンク資産証券部トランザクター(バイスプレジデント)、バンクオブアメリカ証券会社ストラクチャードファイナンス部長(プリンシパル)、ABNアムロ証券会社オリジネーション本部長(マネージングディレクター)等を歴任。『GAFA×BATH 米中メガテックの競争戦略』『アマゾン銀行が誕生する日 2025年の次世代金融シナリオ』『アマゾンが描く2022年の世界』『2022年の次世代自動車産業』『ミッションの経営学』など著書多数。

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