コラム

戦争に加担するハクティビストのDDoS攻撃、日本も「標的」と名指し...勧誘や訓練で、すそ野が拡大中

2024年02月14日(水)19時02分

また、ハッカーによって作成された多くの自作の攻撃ツールが、メッセージングアプリ「Telegram」や、ソフトウェアを開発できる「GitHub」のようなプラットフォームで広く共有されている。さらには、現在進行している紛争でサイバー攻撃を開始する方法に関するチュートリアルも、筆者がCEOを務めるサイバーセキュリティ企業サイファーマでは、組織に危険を与えるサイバーリスクを徹底調査する脅威インテリジェンスとして提供する外部脅威情勢管理(ETLM:External Threat Landscape Management)で、実際に特定し、分析している。

ハッカーたちは、紛争の当事国や地域だけでなく、それぞれを支持する支援国などもターゲットにする。パキスタンやトルコ、バングラデシュ、イラン、イエメンのハッカーたちの多くは、パレスチナを支持している。イスラエルとハマスの紛争では、日本政府がイスラエルへの支持を表明した後、ハクティビスト集団の一部が日本政府や民間企業を攻撃ターゲットとして名指している。

アノニマスもイスラエル支援国への攻撃を呼びかけ

ハッカー集団であるアノニマスも、「Telegram」などでイスラエルとイスラエルを支持する国や勢力を継続的に攻撃するよう呼びかけている。パレスチナを支持するハクティビスト集団が多数存在する一方で、パレスチナに反対するグループの数ははるかに少ない。

親パレスチナのハクティビスト集団は、クロアチアや西インド諸島などで、電光のビルボードをハッキングして、イスラエルを批判するようなメッセージを表示させるなどの工作を繰り広げている。このように、紛争に起因するサイバー攻撃が各地に飛び火しているのである。

240214int_cfi02.jpg240214int_cfi03.jpg

親パレスチナのサイバー攻撃グループ「SystemadminBD」が公式サイトで攻撃を発表

そのほかの例では、例えばイスラエルを支持するインドでは、イスラエルを支持するインドのハッキング集団がパレスチナ関連組織などにサイバー攻撃を実施した。すると、そうしたインド勢力による攻撃に報復する目的で、バングラデシュに拠点を置く親パレスチナのサイバー攻撃グループ「SystemadminBD」がインド政府を標的にしたハッキング攻撃を実施。インド政府の内部データを盗んで漏洩させたと主張した。さらにこの「SystemadminBD」は、パレスチナ支持を示すために、いくつかのインドの工科系大学などのデータベースも侵害した。

アノニマスはさらに、インドで国営郵便サービスを提供するインディア・ポストを攻撃。ウェブサイトが4日間もアクセス不能になり、数多くの利用者に影響を及ぼした。

トルコのサイバー攻撃集団である「Turkhackteam」は、イスラエルの対外諜報機関であるモサド(対外情報庁)を攻撃対象にしている。

プロフィール

クマル・リテシュ

Kumar Ritesh イギリスのMI6(秘密情報部)で、サイバーインテリジェンスと対テロ部門の責任者として、サイバー戦の最前線で勤務。IBM研究所やコンサル会社PwCを経て、世界最大の鉱業会社BHPのサイバーセキュリティ最高責任者(CISO)を歴任。現在は、シンガポールに拠点を置くサイバーセキュリティ会社CYFIRMA(サイファーマ)の創設者兼CEOで、日本(東京都千代田区)、APAC(アジア太平洋)、EMEA(欧州・中東・アフリカ)、アメリカでビジネスを展開している。公共部門と民間部門の両方で深いサイバーセキュリティの専門知識をもち、日本のサイバーセキュリティ環境の強化を目標のひとつに掲げている。
twitter.com/riteshcyber

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、「ゴールデン・ドーム」詳細発表か 東部

ワールド

マスク氏、政治献金削減へ テスラCEOあと5年継続

ワールド

中国、WHOに今後5年間で5億ドル追加拠出へ 米に

ワールド

トランプ氏「対応を検討中」、EU・英の対ロシア追加
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:関税の歴史学
特集:関税の歴史学
2025年5月27日号(5/20発売)

アメリカ史が語る「関税と恐慌」の連鎖反応。歴史の教訓にトランプと世界が学ぶとき

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    コストコが「あの商品」に販売制限...消費者が殺到した理由とは?
  • 3
    【クイズ】世界で1番「太陽光発電」を導入している国は?
  • 4
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 5
    【裏切りの結婚式前夜】ハワイにひとりで飛んだ花嫁.…
  • 6
    「空腹」こそが「未来の医療」になる時代へ...「ファ…
  • 7
    中ロが触手を伸ばす米領アリューシャン列島で「次の…
  • 8
    小売最大手ウォルマートの「関税値上げ」表明にトラ…
  • 9
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山…
  • 10
    トランプは日本を簡単な交渉相手だと思っているが...…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    ワニの囲いに侵入した男性...「猛攻」を受け「絶叫」する映像が拡散
  • 4
    中ロが触手を伸ばす米領アリューシャン列島で「次の…
  • 5
    「運動音痴の夫」を笑う面白動画のはずが...映像内に…
  • 6
    コストコが「あの商品」に販売制限...消費者が殺到し…
  • 7
    【クイズ】世界で1番「太陽光発電」を導入している国…
  • 8
    ヤクザ専門ライターが50代でピアノを始めた結果...習…
  • 9
    トランプ「薬価引き下げ」大統領令でも、なぜか製薬…
  • 10
    サメによる「攻撃」増加の原因は「インフルエンサー…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山…
  • 5
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 6
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 7
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 8
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 9
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 10
    ワニの囲いに侵入した男性...「猛攻」を受け「絶叫」…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story