コラム

ロシアのウクライナ侵攻、「地球規模の被害」を生んでいた...気候負荷の損害額は430億ドル超に

2025年11月20日(木)19時10分

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ロシアの全面侵攻による気候被害を発表するウクライナ関係者ら(筆者撮影)


乾燥した気象条件が火勢を強めた。戦闘で消防活動が妨げられたため森林・草地・農地の火災が拡大した。森林火災は倒れた木が時間をかけて腐っていく将来排出も含め長期的な影響が残る。エネルギーインフラ破壊による排出は1700万トン。

バルト海を通ってロシアからドイツに天然ガスを運ぶ海底パイプライン「ノルドストリーム1・2」破壊による大量のメタン放出(二酸化炭素換算1300万トン)が突出。黒海ガスプラットフォームの長期火災、油槽所・製油所の爆発、高電圧変電設備の絶縁ガス漏出も含まれる。

紛争は地域的破壊だけでなく地球規模の気候負荷を生む

民間航空ではロシア空域閉鎖に伴う大規模な迂回飛行が発生し、欧州―東アジア航路は3時間以上多くかかる例も見られた。3年間の追加排出は2030万トン。難民・国内避難民・ロシアからの国外脱出による移動排出は420万トン。

破壊された建物・道路・工場・送電網などの再建で将来排出されると見込まれる量は6420万トンに達する。住宅や公共施設の再建に必要なコンクリートと鉄鋼が主な要因で、産業・公益部門の損壊も排出量を押し上げた。

武力紛争が地域的破壊にとどまらず、地球規模の気候負荷を生むことが改めて浮き彫りになった。昨年の大規模森林火災は、気候変動と戦争が相互に影響し、被害を増幅させる構造を象徴する事例となった。被害は前線だけでなくウクライナ全土に及び、環境への影響も深刻だ。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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