コラム

豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界がうらやむ国」ノルウェーがハマった落とし穴

2025年08月28日(木)16時57分

職人気質が病欠・障害給付に置き換わる

政権中枢の実務経験不足やSTEM(科学・技術・工学・数学)人材の乏しさが制度疲労の一因だという。昨年、企業で勤務した経験のある閣僚は20人中たった2人、経済に詳しい人材は1人、工学系はゼロ、半数が政治・団体以外の職歴がなかった。

こうした人材不足は「優先順位の取り違え」と「コストのかかる政策」を生む。建設分野の環境規制は生産性向上に結びつきにくく、公共部門のデジタル化もさほど効果を上げていない。ホルテ氏は「職人気質が病欠・障害給付に置き換わったのは嘆かわしい」と語る。

就業しない人口の多さや病欠率の高さは非生産性の象徴だ。「官主導の再分配に依存しすぎるノルウェーの民間部門は赤字」と論じるホルテ氏に「数字のつまみ食い」との批判もある。しかし政治の決断力不足、問題先送りは人材以外に資源のない日本もノルウェーも同じである。

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プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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