コラム

豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界がうらやむ国」ノルウェーがハマった落とし穴

2025年08月28日(木)16時57分

ホルテ氏は米ブルームバーグ(7月26日付)のインタビューに「ノルウェーは可能性と人材を引きつける磁石であるべきだ。ところが、実際はその逆。野心がない。それは100%石油基金(政府年金基金)のせいだ」と語っている。

今年1月に出版されたホルテ氏の著書はノルウェー国民の反響を呼び、発売後数時間で完売、増刷され、人口560万人の小国で5万6000部を売り上げた。ノルウェーは自己満足に陥り、新たな生産性の源をつくるのではなく、富に頼って暮らしているとホルテ氏は嘆く。

「政治家のための政府支出基金」

成長は鈍化し、政府が国民に投資しても成果は思うように上がらない。年間病欠日数は平均27.5日で、OECD(経済協力開発機構)加盟国で最も多く、加盟国平均の4倍。生徒1人当たり平均支出額の約2倍を投じても科学・数学・読解の成績は低迷し、OECD平均を割り込んだ。

ホルテ氏によると、政府年金基金で「何でも賄える」との錯覚が政治に痛みを伴う選択を先送りさせている。結果として政府支出が膨れ上がり、成長エンジンを失った。家計は「国家が自分に代わって貯蓄している」と思い違いをし、借金を重ねる。

政府年金基金の取り崩しが急増した2013年をピークに生産性の伸びが消え、勤勉さも低下した。政府予算は肥大化し、富裕起業家は国外に流出した。ホルテ氏は政府年金基金を「政治家のための政府支出基金」と呼び、野放図な使い途が非生産性を招いていると警鐘を鳴らす。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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