コラム

豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界がうらやむ国」ノルウェーがハマった落とし穴

2025年08月28日(木)16時57分
豊かな国ノルウェーに衰退の兆候が

ノルウェーの首都オスロ Mantas Volungevicius/Shutterstock

<資源依存による産業衰退「オランダ病」回避のため石油マネーを運用し、政府年金基金の資産が280兆円を超えるほど裕福になったノルウェーが非生産的で不健康な国に>

[ロンドン発]ノルウェー南部の港町スタバンゲル沖 310キロメートルの北海で1960年代末、エコフィスク油田が発見された。原油の生産量は98年には日量37万バレルを記録したが、現在は12 万7000バレルに落ち着いている。

資源依存による産業衰退「オランダ病」を回避するため余剰の石油マネーは政府年金基金で運用され、その資産は世界の上場企業時価総額の1.5%に相当する1兆9000億ドル(280兆円)を超える。国民1人当たり34万ドル(5018万円)以上に相当する。

かつて農業・林業・漁業が主産業だったノルウェーは自他ともに認める世界で最も裕福な国の一つになった。低い失業率、国民皆保険制度、教育無償化、寛大な失業給付制度、49週間の有給育児休暇、トップランクの世界所得平等指数、山小屋でのスキー休暇を楽しむ生活文化......。

他の国からノルウェーは羨望の眼差しで見られているはずだった。

「野心がない。100%石油基金のせいだ」

コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニーのオスロ事務所元所長で経済学者マーティン・ベック・ホルテ氏は著書『裕福になりすぎた国』で、石油マネーとその運用で豊かになりすぎたノルウェーは非生産的で不健康な国になっていると指摘し、衝撃を広げた。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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