コラム

「移民狩り」を呼びかけ、避難所に放火...北アイルランドで反移民暴動が激化 世界を襲うヘイトの嵐

2025年06月13日(金)07時30分

北アイルランドはこの20年でマイノリティー人口が全体の3.4%に増え、多様性は増したものの、英国のうちイングランド・ウェールズ18.3%、スコットランド12.9%に比べるとまだまだ多様性は進んでいない。それが時に極端な移民アレルギーのマグマとなって噴出する。

住民は暴動に巻き込まれないよう英国国旗のユニオンジャック、イングランド旗、英国アイデンティティーを強調するアルスター旗を掲げ、玄関や窓に英国やフィリピンの家族が住むことを示すステッカーやメッセージを掲げた。支援要請を受け、スコットランド警察が派遣された。

レジャーセンターにはルーマニア人移民が避難

これは民族や国籍に根差した反移民暴力だ。住民は自分たちのアイデンティティーを旗やステッカーで可視化することで自衛する必要に迫られている。焼き払われたレジャーセンターには人種差別的暴力から逃れるためルーマニア人移民やその他の家族が避難していたとみられている。

ソーシャルメディア上では「抗議者」を名乗り、暴徒にルーマニア人移民狩りを呼びかけるなど、憎悪と嫌悪が煽られる。レジャーセンターの外で撮影された衝撃的な動画には覆面をした暴徒集団が建物に放火する様子がとらえられている。

北アイルランド議会の報告書(今年2月13日付)によると、 北アイルランドでは人種差別的な事件や犯罪が、歴史的な北アイルランド紛争の原因だったプロテスタントとカトリック間の犯罪を上回っており、ヘイトクライムが⼀般に認識されている以上に蔓延している。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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