コラム

「移民狩り」を呼びかけ、避難所に放火...北アイルランドで反移民暴動が激化 世界を襲うヘイトの嵐

2025年06月13日(金)07時30分

格差拡大と富の一極集中は急激な人口移動を引き起こす

多様性は必ずしも地域全員に歓迎されるわけではない。04年度には1446件だった人種差別的な事件や犯罪は山と谷を描きつつ増え続け、23年度には2192件と過去最悪を記録。16年以降、人種差別的な事件や犯罪がプロテスタントとカトリックの宗派間犯罪を上回っている。

昨年7月、英イングランド北西部サウスポートで米人気歌手テイラー・スウィフトをテーマにした子ども向けダンスクラスがナイフで武装した17歳少年に襲われ、少女3人が死亡。少年の両親がルワンダ出身だったことから反移民暴動が吹き荒れ、北アイルランドにも飛び火した。

北アイルランド自治政府のミシェル・オニール首相は「純粋な人種差別であり、他に言い訳のしようがない」と述べた。米ロサンゼルスではドナルド・トランプ米大統領の移民摘発政策に抗議するデモに対して、トランプ氏は州兵に続き海兵隊の投入に踏み切った。

グローバリゼーションによる格差拡大と富の一極集中は急激な人口移動を引き起こし、「異物」を排除しようとする人種や民族の防衛本能に火をつける。果たして私たちは事態がもっと悪化する前にヘイトの連鎖を断ち切ることができるのか。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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