コラム

電撃戦より「ほふく前進」を選んだウクライナ...西側はゼレンスキーの反攻「戦術」を信じてよいのか?

2023年09月26日(火)20時03分

すべてはウクライナの決意を信じられるかだ

地雷原について、フリードマン名誉教授は「ロシア軍は地雷原や要塞を素早く構築することに長けているが、その長所を最大限に生かすには兵員や対戦車兵器、大砲などが必要だ。ウクライナ軍は前進しているが、遅々として進まない。より効果的に装甲車を使用するためにはこれまでに築いた侵入口をより広く安全にする必要がある」という。

ウクライナ軍は夏の反攻を開始した6月に大きな挫折を味わった後、大規模な機甲師団の電撃戦を放棄して、精密射撃に支援された小規模な歩兵突撃を使ってロシア軍の防御帯を破る作戦に切り替えた。米シンクタンク「戦争研究所(ISW)」は25日に「西側はウクライナの戦い方を疑うのではなく、受け入れる時だ」と題した報告書を発表している。

報告書によると、ロシア軍が数カ月にわたって防衛力を強化していたため、ウクライナ軍は大きな困難に直面した。西側の武器供与が遅れたこともあってロシア軍が防御帯を深化させる時間を与えてしまい、ウクライナ軍が昨年後半、北東部ハルキウ州、南部ヘルソン州ドニプロ川右岸の奪還に成功したのに続いて同年冬に反攻の第3段階を開始するのを妨げた。

報告書は「一部の西側アドバイザーが好んだ(アゾフ海に近い)メリトポリ方面に攻撃を一本化させるのではなく、前線全体でロシア軍に圧力をかけ続けるというウクライナ軍の決断は良い適応だった。長期にわたって絶え間なく圧力にさらされ続ければ、ロシア軍に亀裂が入り始めるだろう」と予測する。

すべては西側がウクライナの決意を信じられるかどうかにかかっている。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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