コラム

コロナの教訓「バイオテロにワクチン備蓄で備えよ」 英健康安全保障専門家が指摘

2023年02月08日(水)20時42分

米国に反ワクチン運動を輸出したのは英国

ワクチン懐疑主義についてヘイマン氏は「ワクチン開発では動物実験を行い、動物での安全性と有効性を確認してからヒトに投与され、安全性、次に免疫反応を引き起こす能力、最後に病気そのものへの影響を調べる。コロナワクチンが使用されてから2年余しか経っておらず、長期的にどのような結果が得られるかについてはあまり知られていない」という。

「私たちが知っているのは新しいワクチンに義務付けられている2年間の接種後調査においてワクチンによる有害な副作用や長期の副作用を示す証拠はないということだ。反ワクチン運動にはどう対処すれば良いのか。英国では医療制度が信頼されているため上手く対処できた。一方、信頼されていない中国ではワクチンを摂取しない人がいた」

「短期的に見た場合、人々がワクチンを摂取しないのは間違った判断、間違ったリスク評価をしているからだ」。1998年、英国の胃腸科医師アンドリュー・ウェイクフィールド氏が医学雑誌ランセットに「自閉症の子供の保護者が新三種混合(MMR)ワクチンを接種してから子供たちの様子がおかしくなったと証言している」という内容の論文を投稿した。

世界中が大騒ぎになり、MMRワクチン接種率が落ちたものの、論文はデタラメだったとして撤回され、ウェイクフィールド氏は医師免許を取り消された。しかしウェイクフィールド氏は米国に活動拠点を移し、反ワクチン活動に従事している。「米国に反ワクチン運動を輸出したのは英国だ」とヘイマン氏は苦笑いした。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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