コラム

早くも破綻したトラス英首相の「富裕層のための減税」政策は、日本経済の近未来像か

2022年09月28日(水)12時01分

「カジノで負けが込むギャンブラー」

「高い不平等は働く人々の購買力を削ぎ、社会的コストを公共サービスに押し付ける。富は上から下へ流れていくものではない。下から上へ、そして中から外へ流れていくものなのだ。保守党政権はカジノで負けが込んでいるギャンブラーのようだ。しかし、彼らは自分たちのお金を賭けるのではなく、あなたのお金を賭けている」(リーブズ氏)

トラスノミクスと、27日国葬が行われた安倍晋三元首相の経済政策アベノミクスの違いは中央銀行(日銀)の異次元の量的緩和が伴っているかどうかだ。現代貨幣理論(MMT)の成功モデルとされるアベノミクスについてどう思うか、筆者はミニ集会でリーブズ氏を直撃した。リーブズ氏はこう答えた。

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ミニ集会で筆者の質問に答えるリーブズ影の財務相(26日筆者撮影)

「私がイングランド銀行(英中央銀行)にいた時の最初の仕事は日本担当エコノミストだった。2000年のことで当時、日本はゼロ金利で、量的緩和を追求し始めていた。英国が10年後に経験したのと似たような問題が起きていた。現在の英国経済が独特なのは金融政策と財政政策が全く逆方向に動いていることだ」

「500億ポンドの景気刺激策は裕福な人たちを不釣り合いに助けるものだ。インフレ目標を掲げるイングランド銀行の金利引き上げは住宅ローンだけでなくクレジットカードなどの負債を抱えている人々に不釣り合いな打撃を与える。つまり逆行する財政刺激と金融引き締めが同時に起きている。これは災いのもとだ」

「イングランド銀行は必要があれば行動を起こすと発言したが、率直に言って政府が行ったことのために反応せざるを得なかったのだ。私たちは責任ある経済政策を追求する政府を必要としているが、今の私たちにはそれがない」とリーブズ氏は言った。世界中がインフレに見舞われる中、日本もアベノミクスに終止符を打つべき時が来ている。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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