コラム

「中国の『核兵器』近代化計画に明確な懸念」英首相補佐官 対立激化をどう防ぐか

2022年07月28日(木)17時56分

中国の核弾頭数は2030年に約3倍の1000発に

米国防総省の議会向け年次報告書は、2027年までに運搬可能な核弾頭を700発、その3年後には1000発を保有する可能性があると推定。「中国は核兵器搭載可能な空中発射弾道ミサイルの開発と、地上および海上での核戦力の向上により、陸海空の戦略核能力を確立している可能性がある」と警告する。中国は250基の新しいミサイルサイロを建設中とされる。

ラブグローブ氏が軍備管理の統合と深化のため4つの原則を提案している。第1原則は行動規範の確立に現実的な焦点を当てる。ハイブリッドやハイテクを駆使した紛争における新しい行動規範を確立し、戦略的競争の新たな場として出現するグレーゾーンにレッドラインを設ける。

第2原則は対話の範囲を広げる。戦略的安定性はこれまで大国の仕事だったが、大国だけでは交渉できなくなった。軍備管理に関する協議は伝統的な同盟国やパートナーだけでなく、より広範な国々を対象に拡大する。第3原則は対話から始める。信頼を築き、偽情報に対抗するため、対話の空間とチャンネルを作り、維持する。

第4原則は信頼醸成措置の更新と強化のため早期に行動を起こす。不信、恐怖、緊張、敵意の原因を排除するため、非公開の情報を交換することにより、危機前の状況において一方が他方の行動を正しく理解することを助ける。ニコラス・バーンズ駐北京アメリカ大使は6月、米中関係は1972年のニクソン訪中以来「50年で最低の状態」と指摘した。

台湾を巡る緊張、南シナ海や東シナ海における中国の海洋進出、一帯一路で米中対立が激化する中、バイデン氏と習氏の米中首脳会談で共通の基盤を見出すことができるのだろうか。統合的な抑止と軍備管理のシステムを確立し、戦略的安定性を取り戻すためには米中両国の不断の努力が不可欠だ。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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