コラム

ゼレンスキーは英雄か、世界を大戦に巻き込むポピュリストか

2022年02月27日(日)21時12分

コロナ対策、経済対策、腐敗撲滅に失敗したという非難をかわすため、ゼレンスキー氏はロシア敵視政策を強める。ウクライナ当局は昨年5月、プーチン氏と親交が深い親露派の野党政治家ビクトル・メドベチュク氏を国家反逆容疑で拘束し、裁判所が自宅軟禁に置いた。

同年8月には欧州連合(EU)や北大西洋条約機構(NATO)加盟国など40カ国余の代表を招き、クリミア半島返還を目指す国際枠組み「クリミア・プラットフォーム」の設立会議をキエフで開いた。狼の檻の中に落ちている骨を「ロシア語を話す子供のもの」と冗談を言う超国家主義者の義勇軍大尉にゼレンスキー氏は「ウクライナの英雄」の称号を与えている。

プーチン氏は昨年中にゼレンスキー氏との対話路線を諦め、強硬路線に転換したとされる。

ゼレンスキー氏は髭を剃らず、ミリタリーグリーンのTシャツを着ている姿をSNSに投稿し、自らを「プーチン氏のエナミー・ナンバーワン」と称して"ゼレンスキー劇場"を演じ続けている。「ゼレンスキー氏は平和をもたらすと公約して当選したが、大統領就任3年目にして戦争に突入してしまった」と批判する声もある。

しかし、プーチン氏のウクライナ侵攻でゼレンスキー氏批判は影を潜めた。ゼレンスキー氏はウクライナをプーチン氏の魔手から守る国家の英雄なのか。それとも祖国ばかりか、世界を戦争に巻き込む破壊的なポピュリストなのかは、歴史の評価を待たねばなるまい。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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