コラム

アストラゼネカ製ワクチン EU加盟国が一時使用停止は新たなイギリスいじめ?

2021年03月16日(火)18時00分

フランスやドイツがAZワクチンの有効性に次々と疑念を唱えるのは、EUを離脱したイギリスでワクチン開発や接種が順調に進んでいることが面白くないからだ。EU離脱は失敗に終わらなければならない、そうでなければEU懐疑派のポピュリストが勢いづく──という懸念がある。

ドイツは今年9月に総選挙、フランスは来年春に大統領選を控えている。イギリスを叩けば支持率が上がるという計算が働いても不思議ではない。

その代わり、EUは中国やロシアと協力して域内だけではなく世界中でワクチン接種を進めようとでもいうのだろうか。スペインでは国王フェリペ6世の姉である2人の王女が2月、アラブ首長国連邦(UAE)に父の前国王を訪ねた際、コロナワクチンを接種して「特権乱用」と批判された。

ワクチンが不足し、接種が思うように進まないEUはワクチンの密輸や偽ワクチンの横行を警戒している。自分たちでは正しいことをしていると信じ込んでいるEUの対応にほくそ笑むのは中国の習近平国家主席とロシアのウラジーミル・プーチン大統領だけだろう。

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プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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