コラム

政治における日本の男女平等はイランより一つ上の世界144位

2019年12月18日(水)14時30分

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授乳するマリーン首相©Instagram, @sannamarin

フィンランドのマリーン首相には生後22カ月の娘がいる。授乳している姿をインスタグラムにアップしたこともある。首相就任に際し「自分の年齢や性について考えたことはない」と言い切った。先進国、特に北欧の国々では夫が公平に育児や家事を負担するのは当たり前だ。

フィンランドでは女性の方が男性より大学進学率や専門・技術職に就く割合が高い。だからマリーン首相が連立を組む4党の党首は全員女性、閣僚19人のうち12人が女性という逆転現象が起きる。

取り残される日本

国際捕鯨委員会(IWC)脱退と商業捕鯨の再開、歴史問題を発火点とする韓国との経済戦争。そして女性天皇は認めず、時代にそぐわなくなった男系男子にこだわり続ける日本。

スペイン・マドリードで開催された第25回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP25)を現地で取材して日本の石炭火力発電と、そのインフラ輸出に税金が投入されていることに驚いた。筆者の暮らす英国は2025年に「脱石炭」を実現する計画を掲げている。

日本はこの「失われた30年」で内向きになり、世界から随分、取り残されてしまった。安倍首相が心から女性が輝く社会を実現したいのなら「日本には日本のやり方がある」とわが道を行くのを止め、進んだ他国を見習う必要があるのではないか。

「男女格差報告書2020」のポイントは次の通り。
(1)世界の男女格差は平均31.4%。昨年から今年にかけ149カ国中101カ国が指標のスコアを上げた。
(2)4つの指標の中で男女格差が一番大きいのは政治参加。2番目に格差が大きいのは経済参加。
(3)女性議員の数が大幅に増えたため、昨年から今年にかけ149カ国中ラトビア、スペイン、タイなど108カ国が政治参加の指標を改善。
しかし女性議員の割合は依然として4分の1に過ぎず、女性閣僚は全体の21%。過去50年間、153カ国中85カ国で女性元首は存在せず。
(4)管理職に就く女性の数も増加。世界的に官民の女性マネージャーの比率は昨年より2ポイント向上して36%。
(5)女性の労働市場への参加は停滞、男性の参加率は78%なのに対し女性は55%。同じ仕事での賃金格差は40%以上、すべてを合わせた所得格差は50%も開いている。
多くの国で女性は貸付や土地、金融商品を活用する際、著しく不利で、会社を設立したり資産を運用したりする機会を妨げられている。
(6)教育格差は比較的小さい。 35カ国で教育の男女格差は解消されているが、途上国では20%以上の格差が残る。世界の15〜24歳の少女の10%は読み書きができず、途上国に集中している。
(7)2006年から調査対象になっている107カ国では男女格差は平均して99.5年のうちに解消される。政治参加の格差解消には94.5年。しかし教育における男女格差は今後12年で解消される。

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プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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