コラム

暑さ対策でサマータイム導入を検討 東京五輪・パラリンピックの開催はもはや戦争の遂行と同じなのか

2018年08月09日(木)13時00分

2020年東京五輪組織委員会の森喜朗会長が、安倍晋三首相にサマータイム導入を要望した(写真は7月30日の記者会見) Issei Kato-REUTERS

[ロンドン発]摂氏41.1度という観測史上最高の暑さを記録した日本で、標準時を全国一律に1~2時間早めるサマータイム(夏時間)を導入する是非を検討するよう、安倍晋三首相は8月7日、自民党に指示した。

東京五輪・パラリンピックの暑さ対策として大会組織委員会の森喜朗会長が「地球環境の持続という大きな見地で五輪を日本のレガシーにしてほしい」と要請した。東京五輪・パラリンピックの成功は、安倍政権の最優先課題だ。

「ブラックボランティア」「やりがい搾取」「酷暑の中でのタダ働きは電通を儲けさせるだけ」との批判が高まる中、9月に募集が始まる大会ボランティア8万人、都市ボランティア3万人は果たして集まるのか。

降って湧いたサマータイム導入論は、マラソンなどの競技だけではなく、ボランティア募集にも密接に関係している。しかし東京五輪・パラリンピックを成功させるためにサマータイムを恒久的に導入するというのはどう考えても本末転倒ではないか。

サマータイムが導入されて100年余になる英国で暮らして11年になるが、英国の夏は最高だ。3月の最終日曜日午前1時に時計の針を1時間進めてサマータイムが始まり、10月の最終日曜日午前2時に時計の針を1時間戻す。

サマータイムは少し得をした気がして始まる。大げさに表現すると、1時間のタイムマシンに乗ったような感じなのだ。

イギリスで上手くいった事情

緯度が樺太と変わらない英国では夏の昼は長く、冬の昼は悲しくなるほど短い。健康のためにも日照時間の長い夏に屋外で活動する時間を長くするのは理にかなっている。100年以上前、英国でそれに気づいた男がいる。

ロンドン中心部から地下鉄や電車を乗り継いで南東へ50分弱のペッツ・ウッド駅の近くに「ザ・デイライト・イン」というパブがある。看板には太陽の顔と2つの時計が描かれている。

このパブは地元の建築業者ウィリアム・ウィレット(1856~1915年)にちなんで名づけられた。1905年夏の朝、ウィレットは馬にまたがって近くを回った。陽がさんさんと照っているのにカーテンは閉ざされたままだった。

「夏になったら、時計の針を進めたら良いのではないか」。こんなアイデアがウィレットの頭の中にひらめいた。

時間を伸び縮みさせるのは古代から人類の夢だった。古代ローマでは日の出と日の入りを基準に1日の長さを等分する不定時法が採られた。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

スペイン高速列車衝突事故、死者39人に 国営放送

ワールド

行き過ぎた円安是正し、物価を引き下げる=中道改革連

ビジネス

日経平均は3日続落、利益確定継続 政局不透明感も重

ビジネス

食品の消費税撤廃、財源提案で金利上昇抑制=岡本公明
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
2026年1月20日号(1/14発売)

深夜の精密攻撃でマドゥロ大統領拘束に成功したトランプ米大統領の本当の狙いは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰に地政学リスク、その圧倒的な強みとは?
  • 2
    中国のインフラ建設にインドが反発、ヒマラヤ奥地で国境問題が再燃
  • 3
    DNAが「全て」ではなかった...親の「後天的な特徴」も子に受け継がれ、体質や発症リスクに影響 群馬大グループが発表
  • 4
    シャーロット英王女、「カリスマ的な貫禄」を見せつ…
  • 5
    AIがついに人類に「牙をむいた」...中国系組織の「サ…
  • 6
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 7
    「リラックス」は体を壊す...ケガを防ぐ「しなやかな…
  • 8
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世…
  • 9
    中国ネトウヨが「盗賊」と呼んだ大英博物館に感謝し…
  • 10
    【総選挙予測:自民は圧勝せず】立憲・公明連合は投…
  • 1
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 2
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 3
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試掘の重要性 日本発の希少資源採取技術は他にも
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 6
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 7
    母親が発見した「指先の謎の痣」が、1歳児の命を救っ…
  • 8
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広が…
  • 9
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 10
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story